2010年12月17日 11時3分 更新:12月17日 13時41分
政府は17日午前の閣議で、今後10年程度の安全保障政策の基本方針となる「防衛計画の大綱」(防衛大綱)と、11年度以降5年間の防衛費総額を約23兆4900億円とする中期防衛力整備計画(中期防)を決定した。大綱では、中国の軍事力増強と海洋進出を「地域・国際社会の懸念事項」と指摘し、これまで手薄だった南西諸島に自衛隊を配置するなど、機動性や即応性を重視する「動的防衛力」の構築を打ち出した。
防衛大綱の改定は04年以来6年ぶりで、民主党政権では初めて。1976年に策定された最初の防衛大綱以来の指針だった「基盤的防衛力」構想から転換したのが最大の特徴だ。同構想は旧ソ連を敵国として想定し、外国からの侵攻を抑止する必要最小限の防衛力整備を図る考え方で、これに基づき、北海道に戦車部隊を重点配備するなどの現行態勢が構築されてきた。
新大綱は中国への懸念のほか、北朝鮮が核・ミサイル開発に加え軍事的な挑発行動を繰り返している問題を指摘。こうしたアジア太平洋地域の不安定な安全保障環境に対応する新たな考え方が動的防衛力で、その意義を「防衛力を単に保持することではなく、平素から情報収集・警戒監視・偵察活動を含む適時・適切な運用を行い、我が国の意思と高い防衛能力を明示しておくこと」とした。
具体的には、海上・航空自衛隊を重点的に整備。潜水艦は現大綱の16隻から22隻に、弾道ミサイルの迎撃能力を持つイージス護衛艦も4隻から6隻に増やす。冷戦型の装備は縮減し、陸上自衛隊の戦車は約600両から約400両へ減らす。
陸自定員は1000人減の15万4000人(即応予備自衛官7000人を含む)とする一方、島しょ部を「自衛隊配備の空白地域」とみなし、特に南西地域に陸自の「沿岸監視部隊」を新たに編成・配置することが中期防に盛り込まれた。
武器輸出三原則の見直しについては、反対する社民党に配慮し明記は見送ったが、国際共同開発が「先進国で主流になっている」として禁止対象から外す必要性を指摘。「このような変化に対応するための方策を検討する」と将来的な見直しの検討を示唆した。
国連平和維持活動(PKO)への「参加の在り方を検討する」として、紛争当事者の合意などを条件とするPKO参加5原則の緩和を検討する考えも示した。国家安全保障に関する首相への助言組織を設置することも明記した。より若い自衛隊員を増やすため、幹部の割合を減らすなど「人事制度改革」も実施する。
中期防の総額は前回(05~09年度)から7500億円減だが、10年度予算並みの水準は維持された。防衛大綱の策定は76、95、04年に続き4回目となる。【坂口裕彦】