前回のエントリーでグルーポンの話からGSのディールの話しを絡ませてしまいましたが、今日もFTの1面にGSのFacebookがらみのDealの詳細が出ています。これは本当に味わい深いものがあります。GSはファンドを設立してそこへ富裕層のお金を集めます。はっきりと謳うかどうかはわかりませんが、このお金はFacebook株への投資が主目的になると思われます。つまりまだ一般に売り出されていないFacebookへの投資を一部の富裕層はこのファンドへの投資という形で確保できるわけです。その背後にはもちろん先日GSが獲得した3.8億ドル相当のFacebook株があります。 さて、すごいのはこのディールは新聞記事にもあるように2度も3度もオイシイこと。ファンドがGSから株を買う(あるいはGSがその株を別の器に移してそこからファンドが買う)ということになるため、その取引を独占するGSには独占的に株式の売買手数料が入ります。この手数料はファンドが払いますが、もちろん最終投資家である富裕層のお金です。またファンドは一般的に信託報酬などがかかりますが、どうせGS系の器を使うので、そこにも報酬が落ちます(もちろん最終投資家の負担です)。すでにGSが評価した結果によってFacebookの企業価値が500億ドルになってしまっているということは前回書いたとおりですが、ファンドに株を売却するときに多少の値上がり益もあるでしょう。あと、記事には書いていないものの意外に大きいのがファンドの販売手数料ではないかと。最終投資家はFacebookの株を直接取引するのではなくそれを組み込んだファンドに応募しキャッシュアウトのためにはそれを転売する必要があり、そのときに「ファンド」の取引としての手数料が取れるのではないかと思われます。 さらに、おそらく一番大きいのは、ここまで深くコミットしたことで、GSが来年といわれる同社のIPOの幹事の選定で圧倒的に有利になっていること。その公開手数料は莫大な金額になりそうです(FTによれば”tens of millions of dollars”だそうですが)。 規制当局の立場からすると、投資家への売りぬけを前提とした一連の株式取得、ファンド設立などの行為が”Short term trading” を禁じたボルカールールに抵触しないか、という点が問題になりそうで調査も入っているわけですが、ルールの趣旨からいけば、やはりグレーだろうという専門家の意見もあるようです。 いずれにしても思ったのは、こういう仕組みでお金をひきつけるだけの道具立てがまだアメリカにはいっぱいあるのだということ。いい悪いの議論はおいといて、お金を回すという観点ではやはりアメリカにはなかなかまだ敵わないなぁ、と感じます。今回でもGSは一時的にせよそのバランスシートを使ってリスクをとり、大きなディールにつなげています。今後景気回復が実感されるに連れ、お金の動きはより目立ってくるでしょうし、金余りが継続する中で同じようなディールが増えてくるかもしれません。本当に景気回復ということが大事ならば、こういう話は当局も目をつぶらざるを得ないのではないか、というかそういう風に考えるのではないか、という漠然としたアメリカ的なプラグマティズムへの期待というか予感がワタクシの中にはあります。一方でそういった状況における立役者GS(あるいは同様の立場にある投資銀行系)はやはり、堂々たるSIFIsであると改めて思います。 |
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リフレに対する素朴な疑問(8) インフレだから給料があがっていたの?
Tweet インフレじゃなくてデフレだから給料が下がって厳しい。という声が多い。経済が成長してもデフレだから給料があがらない。という不平不満も聞こえてくる。 ...続きを見る |
ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思... 2011/01/06 06:47 |
内 容 | ニックネーム/日時 |
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とはいえ、天下の大企業たるGSばかりか、色々な大企業が、トップ層のリスクテイクの下(短期で成果を出したら、報償がっぽり貰って、交代して逃げるというノーリスクな振る舞いとも言えるけど)こういう事をやっちゃう体質がアメリカという国にある事が、めぐりめぐって金融やら上場企業やらの規制強化になっているわけで。第一人者はがっぽり儲けても、その結果が規制として国内どころか世界中に跳ね返って、余計な手間を増やすわけで。ただのお行儀の悪い大迷惑な連中なだけじゃないかと。 |
通公認 2011/01/05 17:59 |
通公認さん、どうもです。おっしゃる通りですが、まあ一つ一つの行為にはなんら責められるところはないように思えますし、ダイナミズムというか、こういうご時世にそういうことができてそういうことをやろうとする人々がいるアメリカはやはりある意味すごいなぁと思います。問題はやはり企業評価のところがきちんとなされているのかどうか、というところにかかるのだろうと思います。 |
厭債害債 2011/01/05 22:01 |
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