朝日新聞までもが危惧し始めた「世界に広がるオタク文化」の幻想と危機的状況
2011年02月13日11時20分
提供:日刊サイゾー
提供:日刊サイゾー
もう「世界に広がるオタク文化」の幻想を見る時代は終わった。2月7日付の朝日新聞の別冊紙面「GLOBE」が「MANGA、宴のあとで」と題して、日本のマンガ・アニメが持て囃されているはずのフランスとアメリカで売り上げが伸び悩んでいる現状をレポートしている。
秋葉原で外国人観光客を見かけることは珍しくなくなった。世界のあちこちでオタクイベントが開催されていることはニュースにもなる。YouTubeなどの動画投稿サイトでは、世界のあちこちで、コスプレしてダンスするオタクたちの姿を見ることができる。
それなのに売り上げが伸び悩むとは、どういうことか? 「newsweek日本版」が「萌える世界」と題して世界に広がる萌え文化を紹介したのは2007年3月のこと。それから4年余りの間に何が起こったのか?
答えは簡単である。最初から日本のマンガ・アニメが世界のあちこちで持て囃されているというのは、幻想に過ぎなかったのだ。
そもそも、「クールジャポン」なんて言葉が流行した07年頃、アメリカでもヨーロッパでも、アニメ関連の市場は縮小が始まっていた。アメリカで、日本のアニメおよび関連商品の売り上げがピークに達したのは03年頃。テレビでのアニメ放映時間も07年9月をピークに減少を続ける一方だ。
フランスでは日本のマンガが数多く翻訳出版されているが、とにかく売れない。先の旭の記事では、『デトロイト・メタル・シティ』が5,000部程度しか売れなかったことを記している。もちろん、これはヒドイ例だ。ジャンプ作品はある程度人気を博しているが、それでも08年に発売された『NARUTO』の単行本が22万部売れた程度に過ぎない。
と、読者の皆さんは「ちょっと、データーが古いのではないか?」と思ったかも知れない。その通りである。
ところが、そもそもアメリカやヨーロッパにマンガやアニメの市場がどの程度の規模で存在しているのかを知るのは、かなり難しい。こうしたデータを収集している組織としてはJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)が有名だろう。ところが、この記事を書くにあたって久しぶりにサイトを覗いてみたのだが、欧米圏に関しては新しい調査報告が、あまりなされていない。こうした状況を見ても、あたかも日本のマンガ・アニメが巨大なブームを引き起こしているような状況は、幻想としか思えない。
一方で、日本のマンガ・アニメを求める「濃い」ファンもちゃんと存在する。彼らの存在は大きく見えるが、数は限られたものに過ぎないのだ。
フランスで開催されたオタク系イベントの日本側窓口となったコーディネーターからは、こんな話も。
「日本のオタク事情に極めて詳しいファンは存在します。例えば、『東方』のファンはフランスにもいるんです。ただ、フランスで『東方』を知っている人は200人程度じゃないでしょうか」
筆者は一昨年に、ある週刊誌で「日本のマンガ、実は世界でウケてない!」という少々煽り気味のタイトルで日本国内での幻想と海外での現実とをレポートした。しかし、この記事の反響の多くは批判的なものだった。
だが、今となっては、このレポートは正しかったと言わざるを得ない。
国内需要が縮小していく中で、海外に活路を見出すのはビジネス上、当たり前のことである。だが、海外には、まだ山と溢れる日本産のマンガやアニメを受け入れるだけのすそ野が出来上がっているとは言えない。
例えば、日本ではオタクだけでなく幅広い客層を集めるスタジオジブリの作品群も、欧米では、さほど興行収益を上げてはいない。国内ではさまざまな海外映画祭での受賞が派手に報じられているが、それが集客には結びついていないのが現状なのだ。
だからといって、縮小する一方の国内の需要に頼っていては、マンガ・アニメの壊滅は必至だ。これまで、多くの人は、海外には既に作物が豊富に実る豊かな土壌の楽園があるち勘違いしていた。だが実態は、これから畑を耕してまだ日本のマンガ・アニメを消費する人々を育てていく段階だったのだ。
カギとなるのは、日本のように子供から大人まで、年齢を重ねてもマンガやアニメを消費するライフスタイルをどうやって普及させていくかということ。サブカルチャーの一分野として、日本のマンガ・アニメを消費する人々だけをアテにしていては、先はない。
別段、批判するわけではないが『朝日新聞』が、多くのページを割いて、海外のマンガ・アニメの不況を記すということは、状況は更に先に(悪く)進んでいるということだ。日本のマンガ・アニメの未来を考えるならば、もう、夢を見ている暇はない。
(文=昼間たかし)
【関連記事】
オタクのゴールは大学教授? いまコンテンツ文化史学会が熱い!
レアアースだけじゃなかった! 尖閣問題がもたらすオタク産業大変動の可能性
フランス人は日本のアニメがお好き? パリで「ジャパン・エキスポ」開催
秋葉原で外国人観光客を見かけることは珍しくなくなった。世界のあちこちでオタクイベントが開催されていることはニュースにもなる。YouTubeなどの動画投稿サイトでは、世界のあちこちで、コスプレしてダンスするオタクたちの姿を見ることができる。
それなのに売り上げが伸び悩むとは、どういうことか? 「newsweek日本版」が「萌える世界」と題して世界に広がる萌え文化を紹介したのは2007年3月のこと。それから4年余りの間に何が起こったのか?
答えは簡単である。最初から日本のマンガ・アニメが世界のあちこちで持て囃されているというのは、幻想に過ぎなかったのだ。
そもそも、「クールジャポン」なんて言葉が流行した07年頃、アメリカでもヨーロッパでも、アニメ関連の市場は縮小が始まっていた。アメリカで、日本のアニメおよび関連商品の売り上げがピークに達したのは03年頃。テレビでのアニメ放映時間も07年9月をピークに減少を続ける一方だ。
フランスでは日本のマンガが数多く翻訳出版されているが、とにかく売れない。先の旭の記事では、『デトロイト・メタル・シティ』が5,000部程度しか売れなかったことを記している。もちろん、これはヒドイ例だ。ジャンプ作品はある程度人気を博しているが、それでも08年に発売された『NARUTO』の単行本が22万部売れた程度に過ぎない。
と、読者の皆さんは「ちょっと、データーが古いのではないか?」と思ったかも知れない。その通りである。
ところが、そもそもアメリカやヨーロッパにマンガやアニメの市場がどの程度の規模で存在しているのかを知るのは、かなり難しい。こうしたデータを収集している組織としてはJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)が有名だろう。ところが、この記事を書くにあたって久しぶりにサイトを覗いてみたのだが、欧米圏に関しては新しい調査報告が、あまりなされていない。こうした状況を見ても、あたかも日本のマンガ・アニメが巨大なブームを引き起こしているような状況は、幻想としか思えない。
一方で、日本のマンガ・アニメを求める「濃い」ファンもちゃんと存在する。彼らの存在は大きく見えるが、数は限られたものに過ぎないのだ。
フランスで開催されたオタク系イベントの日本側窓口となったコーディネーターからは、こんな話も。
「日本のオタク事情に極めて詳しいファンは存在します。例えば、『東方』のファンはフランスにもいるんです。ただ、フランスで『東方』を知っている人は200人程度じゃないでしょうか」
筆者は一昨年に、ある週刊誌で「日本のマンガ、実は世界でウケてない!」という少々煽り気味のタイトルで日本国内での幻想と海外での現実とをレポートした。しかし、この記事の反響の多くは批判的なものだった。
だが、今となっては、このレポートは正しかったと言わざるを得ない。
国内需要が縮小していく中で、海外に活路を見出すのはビジネス上、当たり前のことである。だが、海外には、まだ山と溢れる日本産のマンガやアニメを受け入れるだけのすそ野が出来上がっているとは言えない。
例えば、日本ではオタクだけでなく幅広い客層を集めるスタジオジブリの作品群も、欧米では、さほど興行収益を上げてはいない。国内ではさまざまな海外映画祭での受賞が派手に報じられているが、それが集客には結びついていないのが現状なのだ。
だからといって、縮小する一方の国内の需要に頼っていては、マンガ・アニメの壊滅は必至だ。これまで、多くの人は、海外には既に作物が豊富に実る豊かな土壌の楽園があるち勘違いしていた。だが実態は、これから畑を耕してまだ日本のマンガ・アニメを消費する人々を育てていく段階だったのだ。
カギとなるのは、日本のように子供から大人まで、年齢を重ねてもマンガやアニメを消費するライフスタイルをどうやって普及させていくかということ。サブカルチャーの一分野として、日本のマンガ・アニメを消費する人々だけをアテにしていては、先はない。
別段、批判するわけではないが『朝日新聞』が、多くのページを割いて、海外のマンガ・アニメの不況を記すということは、状況は更に先に(悪く)進んでいるということだ。日本のマンガ・アニメの未来を考えるならば、もう、夢を見ている暇はない。
(文=昼間たかし)
【関連記事】
オタクのゴールは大学教授? いまコンテンツ文化史学会が熱い!
レアアースだけじゃなかった! 尖閣問題がもたらすオタク産業大変動の可能性
フランス人は日本のアニメがお好き? パリで「ジャパン・エキスポ」開催
関連記事
経済トピックス
- "日本は貿易自由化進める必要"
- 絶好調の富士通、NECを抜く
- ジャパネット社長が大赤字を告白
- "極めて異例"グラミー特需で1位
- 東京と関西で異なる"社長の行動"
- 世界最大級の取引所が誕生へ
- マック Jリーグと契約締結した訳
- 英国がハチャメチャになるとも
- 西友の食品売り場が大暴走
関連ニュース:アニメ
- 人気モデルがイケメン彼氏と制服デート
モデルプレス 02月15日22時46分(4)
- 木村カエラ、出産後に風貌が激変?!
共同通信 02月15日16時48分
- 今年はポケモン映画もブラック&ホワイト!日刊テラフォー 02月16日10時00分
- 完売必至!エースを讃える公式メモリアルアイテムがついに誕生!ワンピース 限定公式メモリアルウォッチ 火拳のエース『炎の記憶』
@Press 02月16日09時30分
- The Quest For History 仏像イラストガイド本が好き! 02月16日09時10分
150円
TSUTAYA DISCAS
|
150円
TSUTAYA DISCAS
|
150円
TSUTAYA DISCAS
|
150円
TSUTAYA DISCAS
|
経済アクセスランキング
- ジャパネットたかたの高田社長、過去に値段を間違えて伝えてしまい大赤字になったとTwitterで明かす
デジタルマガジン 14日20時00分 (71)
- 「潜入ガールズトーク!〜現役女子大生に聞く、デート・プレゼント・etc…編〜」
livedoor HOMME 15日09時30分 (17)
- 英国はそろそろ量的緩和政策を止めないとハチャメチャなことになるMarket Hack 15日23時19分
- 京都の「一代果て(いちだいはて)」という言葉をご存じですか?不動産投資と金融・ファイナンスブログ 15日19時21分 (13)
- デパート西友が大暴走! 食品売り場で『ラブ注入丼』を販売
ロケットニュース24 15日06時57分 (45)
- アメリカの年収300万円の人が、日本の年収1500万円の人より豊かなのはナゼ?内藤忍の公式ブログ SHINOBY'S WORLD 15日02時58分 (102)
- レストラン運営会社「働いてる人がブラックと思ってないので、周りから何言われてもいい」
ロケットニュース24 15日00時00分 (17)
- 機長挨拶で感じたJALの変化大西 宏のマーケティング・エッセンス 15日14時15分 (30)
- マクドナルドの原価表が流出 / マックフライポテト14円など
ロケットニュース24 14日06時00分 (1253)
- 「一度、無職になったら就職できない」は大ウソ!?新卒採用と雇用に秘められた誤解と矛盾――人事・雇用ジャーナリスト 海老原嗣生氏との特別対談【前編】 ダイヤモンド・オンライン 15日11時06分 (2)