Market Hack

ユリ・ミルナー

IPOしなくてもウハウハのキャッシュアウトができるGroupon

先日お伝えしたGrouponのプライベート・ラウンドですが、テッククランチ、ロイターその他の伝えるところでは9.5億ドルのうち既に5億ドルのハメコミが完了したそうです。

今回完了した5億ドルのうち3.5億ドルは所謂、「リクイディティー・イベント(流動性確保行為)」だとされていますが、早い話が創業者たちによるキャッシュアウト、つまり自分の持ち株の処分でした。

つまり会社の資本に回されるのは1.5億ドルのみです。

今回持ち株を一部キャッシュアウトしたのはアンドリュー・メイソン、エリック・レフコフスキー、ブラッド・ケイウェルらです。

■ ■ ■

このニュースを見て僕のキモチは複雑です。

先ずグルーポンがムチャクチャに美味しいビジネス・モデルであることは明らかです。
以前に説明したようにこのビジネス・モデルはキャンペーンを打とうと考える店主に先立つキャッシュが無くても全然オッケーです。

なぜなら現金はGrouponの客(つまりアナタやワタシ)がクーポン購入というカタチで先払いするからです。

Gruoponは客のクレジットカード口座などから引き落としたキャッシュを2等分して、半分は自分のポケットに入れ、もう半分は店主に渡します。

後は店主はクーポンを提示したお客さんに対して「タダ働き同然」のサービスを提供する(=実際には約75%引き)ことでお店の存在を知ってもらい、サービスの良さをクチコミで伝播してもらうわけです。

この「前受け方式」があるためにGrouponのキャッシュフローのやりくりは極めてスムーズです。
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日経平均株価予想 High or Low?

ブログメディア

Mail.RUって、どんな会社?

最近話題になることが多いMail.RUとは一体、どんな会社なのでしょうか?

Mail.RUはロシア最大のインターネット持ち株会社です。

同社はインターネットを通じたコミュニケーションならびにエンターテイメントのプラットフォームを提供しています。

その経営方針はインターネット・サイトの運営会社としての側面と「投資会社」としての側面を兼ね揃えています。

同社の傘下にはロシアの三大ソーシャル・ネットワーク(SNS)のうち第2位のOdnoklassnili(略してOK)とMoi Mirがあります。さらにロシア第1位のソーシャル・サイト、vKontakte(VK)の24.99%を保有しています。

同社はさらにロシア最大のインスタント・メッセージ(IM)ネットワーク(Agentならびに ICQ)を運営しています。メール(Mail.RU)のほかフォト・サイト、ビデオ・シェアリング、ブログ、オンライン・デート・サイトなども運営しています。

エンターテイメントの部門ではオンライン・ゲーム(MMO)やオンライン・ソーシャル・ゲームを運営しています。

同社の運営するウェブ・ポータルはロシア第2位です。

同社はさらにQIWIと呼ばれるオンライン・ペイメント会社の25%を所有しています。

これらのポートフォリオ企業の多くはMail.RUが株式取得によってだんだん持ち株比率を増やした投資対象です。同社がこれまでどのようにこれらの子会社への支配を強めていったかについては下のグラフにまとめておきました。
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「行かず後家」化する米国のネットベンチャー

いま米国では勢いのあるネットベンチャーほど「行かず後家」状態になっています。

「行かず後家」の意味は日本語俗語辞典によると:

行かず後家とは、適齢期を過ぎても嫁に行かない女性を嘲う言葉

と定義されています。
さらに解説として:

後家とは夫に死なれ、再婚をせずに独身でいる女性のことである。つまり行かず後家とは何歳になっても後家さんのように嫁に行かない女性のことで、そういった女性を嘲う言葉である。行かずだけでも適齢期を過ぎても嫁に行かない女性を意味するが、後家をつけることで更に嫌みが込められている


と説明されています。

さて、こんにちのシリコンバレーでは年頃なのにぜんぜん婚活に興味を示さない優良企業が、それこそゾロゾロあります。ここでいう婚活とは株式公開の意味です。

Facebook やTwitterがその最たる例ですけど、他にも書ききれないくらい沢山のネットベンチャーが株式公開をできるだけ後回しにしようとしています。

それらの企業の経営者にとってなぜ株式公開のプライオリティーが下がったのでしょうか?

それは株式を公開すると経営権のコントロールを少し譲らないといけないとか、四半期決算を気にしながら会社を切り盛りしなければいけなくなるとか、まあいろんな理由が挙げられています。

でも最近のネットベンチャーが株式公開を至上の経営課題としない理由は、外部資本を導入しなくても、会社はウハウハで回るということがひとつあるように思うのです。

つまりさしあたってビジネスをエンジン全開で拡張しようとしている局面で、ボトルネックになっているのは軍資金ではないということです。

これは1990年代半ばのインターネット産業の置かれた状況とは似ても似つかぬ状況です。

当時はないないづくしでした。

先ずネットへの接続はもっぱら電話回線でダイヤルアップでした。ADSLなどのブロードバンドが普及しなてかったのです。

次にデータ・センターが不足していました。

だいいち、データ・センターと言っても投資家の方でそれが何をやっているところなのか想像できない人が大半でした。

僕の勤めていた投資銀行は最初の上場データ・センターであるエクソダス・コミュニケーションズという会社の幹事でしたが、エクソダスを薦めても、「なにそれ?!“#$%」という感じで、株価は梃子でも動かなかったのです。

(やっぱりデータ・センターというのは箱モノだから、、、投資家にはウケないのかな?)と諦めかけていたある日、サンフランシスコで「ぐらっ」とデカイ地震がありました。多くの場所でネットの接続が切れたのです。

僕は慌ててエクソダスに電話を入れました。するとエクソダスのデータ・センターは正常に稼働していることがわかったのです。

「エクソダスのデータ・センターは生きてるぞ!」

この情報が伝わった途端、同社株は猛然とラリーしはじめたのです。

なぜこんなエピソードをクダクダ書くかというと、当時はデータ・センターひとつ作るにしても先ず資金調達しなければいけなかったし、この手のリスキーな事業を興す場合は銀行からの借り入れでは駄目なのです。やっぱり株式でなくてはいけない。

苦労といえば今をときめくエフファイブ(FFIV)のIPOも苦労しました。同社はロード・バランサーと呼ばれる、データ・センター内のサーバの負荷を均すネットワーク機器を作っている会社です。でも当初はネットが遅いのは主にダイヤルアップの回線が遅いのがイライラの原因であって、ロード・バランサーの必要性は殆ど認識されなかったのです。

アマゾンのIPOも「ウォール街の強欲さがよく現れている醜いディールだ」とコケコケにされました。先行投資のための資金をまずかき集めて、それを成功する保証のない事業にブチ込むのは下品だと考えられていたからです。

このように何もないところから一斉にインターネットの産業を立ち上げなければいけなかったのです。

だからものすごいリスクを伴いました。

さて、翻って今の状態を考えてみましょう。

ネットによる起業はリスキーなのでしょうか?

僕に言わせれば:

「御冗談を」

ということです。こんなのリスキーでも何でもありません。今は全てが揃っているし、ネット起業にはぜんぜんお金はかかりません。

新しいアイデアがあれば明日にでも会社を始めればいいんです。別に事業資金なんて沢山ある必要はありません。

サーバのキャパシティはクラウドでオンデマンドの従量契約を結べばそれでOK。

だから元手が要るほうが、やっていることがおかしいのです。
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フェイスブック(Facebook)、ジンガ(Zynga)、グルーポン(Groupon)などを「裏口」でトレードする機会が生まれる Mail.ruがロンドンにIPO

ロシアのネット企業、Mail.ruがロンドン取引所(LSE)にIPOすると発表しました。

今回調達資金は約7.5億ドルで同社の発行済み株式数の約15%が売りだされる予定です。それから逆算した時価総額は約50億ドルになります。

このIPOは注目されると思います。

その理由は今回IPOされるのは実質的にはデジタル・スカイ・テクノロジーズ(DST)だからです。(名前はDSTから傘下のサービスのひとつであるMail.ruに改名されました。)
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編集長プロフィール
hirose_takao広瀬隆雄(Hirose Takao)
米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
Twitter/@hirosetakao
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