先日お伝えしたGrouponのプライベート・ラウンドですが、テッククランチ、ロイターその他の伝えるところでは9.5億ドルのうち既に5億ドルのハメコミが完了したそうです。

今回完了した5億ドルのうち3.5億ドルは所謂、「リクイディティー・イベント(流動性確保行為)」だとされていますが、早い話が創業者たちによるキャッシュアウト、つまり自分の持ち株の処分でした。

つまり会社の資本に回されるのは1.5億ドルのみです。

今回持ち株を一部キャッシュアウトしたのはアンドリュー・メイソン、エリック・レフコフスキー、ブラッド・ケイウェルらです。

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このニュースを見て僕のキモチは複雑です。

先ずグルーポンがムチャクチャに美味しいビジネス・モデルであることは明らかです。
以前に説明したようにこのビジネス・モデルはキャンペーンを打とうと考える店主に先立つキャッシュが無くても全然オッケーです。

なぜなら現金はGrouponの客(つまりアナタやワタシ)がクーポン購入というカタチで先払いするからです。

Gruoponは客のクレジットカード口座などから引き落としたキャッシュを2等分して、半分は自分のポケットに入れ、もう半分は店主に渡します。

後は店主はクーポンを提示したお客さんに対して「タダ働き同然」のサービスを提供する(=実際には約75%引き)ことでお店の存在を知ってもらい、サービスの良さをクチコミで伝播してもらうわけです。

この「前受け方式」があるためにGrouponのキャッシュフローのやりくりは極めてスムーズです。
もちろん地域毎の小売店やサービス業のオーナーへの接触には人海戦術で手間がかかります。その分、営業担当者を雇わなければいけないので粗利益は完全なウェブ企業よりは低い筈です。

しかし支払い条件をほんの少し自社に有利にするだけで同社のキャッシュ・ジェネレーションはキョーレツになるわけです。

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もうひとつ今回のファンディングを見ていて感じた事はVCの相対的な地位低下です。これはもう目を覆わんばかりに情けない状態。完全に起業家のキャッシュアウトのための「受け皿」と化しています。

結局、ユリ・ミルナーのような新しい価値観をベンチャー・キャピタル業界に持ち込む奴が出てきたお陰でベンチャーが「行かず後家」化し、VCのディスインターメディエーション(=蚊帳の外に置かれ、投資機会に参戦させてくれない事)が起きているわけです。

このため、1990年代であればIPO時に一般投資家が引き受けたであろう「ゴミ箱」の役目を、本来ならもっとプライドが高い筈のクライナー・パーキンスをはじめとした一流どころVCが今はいそいそしながら果たしている状態なのです。

言わば今まで銀座のクラブに君臨していたホステスが岐阜の柳ヶ瀬あたりに堕ちてゆくようなウラ寂しい光景なわけです。