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きょうの社説 2011年2月16日
◎景気上方修正 「踊り場」脱却へ視界良好
日銀が9カ月ぶりに景気判断を上方修正し、「踊り場」からの脱却へ向けて視界が晴れ
てきた。昨年末ごろから消費者の節約疲れもあり、個人消費が下げ止まるなどして街角の景気実感が少しずつ上向いていたが、輸出や生産に持ち直しの動きが出てきたのは心強い。日銀は昨年10月にまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、足踏み状 態の景気が今年春以降に再び回復基調を強めると予測した。今のところ、このシナリオ通りに進んでいると見てよいのだろう。 企業の設備投資をけん引しているのは、最近のスマートフォン(多機能携帯電話)人気 である。石川県でも東芝モバイルディスプレイ(TMD、埼玉県深谷市)が能美市に液晶パネルの新工場を建設するなど、部品工場の建設計画が相次いでおり、昨年12月の機械受注統計では設備投資の先行指標となる民需(船舶・電力を除く)が4カ月ぶりにプラス転換した。 日銀金沢支店の「北陸の金融経済月報」(2月)を見ると、北陸3県は、設備投資や住 宅投資、個人消費が下げ止まった半面、輸出は円高や外需の在庫調整的な動きで増加ペースが鈍化し、全体として「持ち直しの動きが弱まりつつある」との表現にとどまっている。しかし、1千億円超の規模といわれるTMDの新工場をはじめ、製造業の設備投資が活発化してきたこと、電気機械や一般機械などの輸出が持ち直してきていることで、先行きに期待が持てるようになってきた。 スマートフォンなどに使用される高品質の部品は、日本企業が最も得意とする分野であ る。電気機械は北陸の主力産業であり、「特需」の追い風を受けやすく、景気回復のけん引役になれるはずだ。 日銀が金融政策決定会合後の声明文で、日本経済について「輸出や生産は、増加基調に 復する動きがみられる」と結論付けたのは、世界経済の成長が新興国や資源国に引っ張られる形で再び騰勢を強めているためである。円高が懸念材料ではあるが、世界規模でのIT関連製品の在庫調整が終了すれば、日本経済は「踊り場」を完全に離脱できるのではないか。
◎人口減の世帯増 地域の福祉力に重い課題
相次いで発表された石川、富山県の2010年国勢調査速報で共通する傾向は、県人口
の減少が続く半面、世帯数は一貫して増加し続けており、地域福祉の在り方に重い課題を投げかけていることである。こうした状況も踏まえて、石川県は新年度に「地域福祉支援計画」を策定し、住民や企業による見守り活動を後押しする仕組みを整える方針という。富山県は同支援計画を策定済みであるが、こうした「地域の福祉力」を高める取り組みは今後ますます必要になる。国勢調査速報にみられる両県共通の特徴は、世帯数が前回調査よりいずれも3%以上増 えた一方、1世帯当たりの人数が石川2・65人、富山2・85人とどちらも4%以上減少し、世帯規模の縮小が続いていることである。 世帯数の増加と世帯規模の縮小は、核家族化で夫婦だけや独居の高齢世帯の増加を示す ものでもある。こうした家族状況の変化は、民生委員など既存制度の福祉サービスをカバーする新たな地域福祉施策の拡充を迫っている。全国で民生委員の定数割れが問題になっているが、その背景には、世帯数の増加で民生委員の定数自体が増えている実情もある。 石川県は地域福祉支援計画で、新聞、郵便、牛乳などの配達員による「地域見守りネッ トワーク」や、お年寄りの話を聞く「傾聴ボランティア」の養成をめざしている。地域の福祉力を向上させる一つのアイデアである。 社会福祉法に基づく県の地域福祉支援計画は、市町村が策定する「地域福祉計画」と対 をなすものである。この二通りの計画づくりでは、富山に比べて石川は遅れていると言わざるを得ない。 厚生労働省の昨年3月末時点の調査によると、地域福祉計画を策定済みないし10年度 以降に策定予定の自治体は、富山の11市町村に対して石川は8市町にとどまっている。厚労省調査では、担当職員やノウハウが不十分なために地域福祉計画を策定できずにいる市町村が多い。県は支援計画の策定に合わせて市町村の計画づくりの指導を強める必要もある。
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