日米同盟がぐらつき、外交力が弱まる日本はロシアからも足元を見透かされている。前原誠司外相との日ロ外相会談で、ラブロフ外相が北方領土問題をめぐって強硬な姿勢を鮮明にしたのもその表れだろう。
日本は北方領土交渉で譲歩すべきではない。同時にいま求められているのは、激変する国際秩序のなかで経済や安全保障も含めて、日本の対ロ外交をどう位置づけていくかである。明確で包括的な長期戦略が今こそ政府に求められる。
ラブロフ外相は「日本が過激なアプローチをとるなら平和条約交渉は展望がなくなる」と警告した。菅直人首相がメドベージェフ大統領の国後島訪問を「許し難き暴挙」と批判したことを指しているのだろう。
ロシアは大統領に続き、第1副首相や地域発展相、国防相らも国後島や択捉島を訪れた。日本の国民感情を逆なでするばかりか、日ロが積み上げてきた外交上の合意を無視するものだ。前原外相が北方領土は「歴史的にも、国際法上も日本固有の領土だ」と反論したのは当然だ。
北方四島の帰属は未解決というのが日ロの共通認識だったはずだ。1956年の日ソ共同宣言では平和条約締結後に歯舞、色丹両島を日本に引き渡すと明記した。93年の東京宣言では四島の帰属問題を解決し、平和条約を締結するとうたっている。
ただ、感情的な応酬を続けるだけでは事態を打開できない。まず日ロが冷静に話し合い、日ソ共同宣言や東京宣言の有効性を再確認するところから始めるしかない。
それと同時に、資源や原子力、省エネなど双方の利益にかなう経済協力を進めることが重要だ。互いに必要な協力相手であるとの認識を築ければ、北方領土返還交渉を前進させるのにも有用であろう。
ロシアが日本に配慮せざるを得ない環境をつくることも大切だ。例えば日米同盟の弱体化が続けば、ロシアの対日軽視が加速しかねない。日米同盟の強化は極めて大事だ。
日ロで戦略上、協力できる分野を探す必要もあろう。ロシアは中国軍の台頭を懸念しているといわれる。対中政策をめぐって、日ロ両国の連携を探ることも検討に値する。
激動する世界では、これら実利に基づく対ロ関係の構築は様々な意味で国益にかなう。北方領土で直ちに譲歩を引き出すのは難しいとしても長期的にみればその打開への追い風となろう。北方領土交渉は粘り強く進めるべきだが、そのことと長期戦略に基づき経済と安保で関係を進展させることは決して矛盾しない。
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