2011年2月14日21時32分
夫婦が同じ姓を名乗ることを定めた民法750条は、個人の尊重や男女平等を定めた憲法に違反しているとして、東京都の事実婚夫婦ら男女5人が14日、国などを相手取り、総額600万円の損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こした。原告弁護団によると、夫婦別姓についての違憲訴訟は初めて。議論は司法の場に持ち込まれた。
訴えたのは、東京都荒川区のフリーライター加山恵美さん(39)・会社員渡辺二夫さん(43)の事実婚夫婦1組と、富山市の元高校教諭塚本協子さん(75)ら女性3人。塚本さんら3人は結婚して改姓したが、旧姓を通称として使用している。
民法750条は、夫婦が一方の姓を選ぶことを結婚の要件にしている。原告側はこの規定が、憲法13条の定める個人の尊重を侵害していると主張。結婚は男女の合意のみに基づいて成立し、男女は本質的に平等と定めた憲法24条に違反するとしている。
国の法制審議会が1996年、夫婦別姓を選択できるよう民法改正案の要綱をまとめたにもかかわらず、国は法改正を怠り、原告に精神的苦痛や損害を与えたとして、加山さん・渡辺さん夫婦に150万円ずつ、他の3人に100万円ずつ支払うよう求めている。
また、加山さん・渡辺さん夫婦は、荒川区に対する行政訴訟も起こした。今年1月、両方の姓で婚姻届を提出したが受理されず、不受理処分の取り消しを求める。
選択的夫婦別姓制度をめぐっては、法制審が改正案の要綱をまとめたが、自民党の反対で提出されなかった。97年以降は、民主党や超党派の議員が、議員立法で民法改正案を繰り返し提出したが、すべて廃案になっている。09年の政権交代後、千葉景子法相(当時)が政府案提出に意欲を見せたが、連立を組んでいた国民新党や、民主党の一部議員の反対で実現しなかった。政権交代後は、議員立法案も提出されていない。
原告弁護団の榊原富士子団長は「国会では夫婦別姓を選べる制度への道が途絶えているため、提訴に踏み切った」と説明している。(杉原里美、吉川一樹)