2011年2月15日21時15分
ヒーローを名乗る匿名寄付の輪が広がるなか、「これを機会に児童養護施設に目を向けて」と願う女子プロレスラーがいる。漫画のタイガーマスクさながらに、覆面レスラーとして戦う大阪出身のコマンドボリショイさん。これまでは施設で育った生い立ちを伏せてきたが、「運動」をきっかけに、子どもを試合に招待したり、施設を慰問したりする活動を20年続けてきた思いを語った。
「がんばれっ」。6日、大阪市中央区。プロレス会場の観客席から、市内の児童養護施設「博愛社」から招かれた子どもたちの歓声が飛んだ。スポットライトが当たる四角いリングで、小柄なボリショイさんが華麗な技を繰り出すと、子どもたちは思わず身を乗り出した。
1月に施設を訪れたボリショイさんが招待した。小学6年の男子(12)は「体が小さいのに、テクニックがすごい。すごく鍛えたんだと思う」と興奮気味に話した。
「友達が持っているかわいい文房具がうらやましかった」。ボリショイさんは2歳の時に父親が病死。母親は7人の子どもたちを育てられず、ボリショイさんは大阪府内の児童養護施設で3歳から15歳まで過ごした。
幼い頃は「母さんに会いたい」と泣き出し、施設の職員から「あんただけじゃない」と諭されたことも。辛抱の多い生活のなかで、夢中になったのがプロレスだった。テレビは夕食後の2時間に制限されていたため、職員に隠れてプロレス中継を見た。
あこがれは、一世を風靡(ふうび)した人気コンビ・クラッシュギャルズ。リングで戦い、歌う姿に心を奪われた。大阪城ホールでの試合を見るため、片道の電車賃だけを手に友達と施設を抜け出し、会場周辺で職員に見つかって連れ戻されたこともある。