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【社会】

飲酒運転同乗者に実刑 熊谷9人死傷事故

2011年2月14日 夕刊

裁判員裁判地裁判決「制止義務あった」

 埼玉県熊谷市で2008年2月、9人が死傷した事故で、飲酒運転の車に同乗しながら運転手の男を制止しなかったとして、危険運転致死傷ほう助罪に問われた飲食店手伝い大島巧(48)、無職関口淳一(46)両被告の裁判員裁判の判決公判が14日、さいたま地裁であった。田村真裁判長は「両被告が(飲酒運転の)車の発進を了解したという被告の捜査段階の供述は、信用できる」などと述べ、懲役2年(求刑懲役8年)の実刑判決を言い渡した。同罪の裁判員裁判の審理は全国初で、判断が注目されていた。

 判決理由で、田村裁判長は「両被告は、運転していた男が正常な運転が困難と認識しており、制止義務があった」と指摘した。飲酒運転厳罰化の流れの中、判決は「あくまでほう助で積極的とは言えない」として、検察側の求刑を大幅に減軽したが、同乗者の刑事責任は厳しく問われるべきだと判断し、実刑を選択したといえる。弁護側は控訴する方針。

 判決によると、両被告は08年2月17日夜、熊谷市内のキャバクラ駐車場で、同僚の元トラック運転手の男(35)=危険運転致死傷罪で懲役16年確定=に「一回りしてきましょうか」と尋ねられた際、男が酒に酔って正常な運転が困難だと知りながら、自分たちを乗せて乗用車を運転することを「そうしようか」と言うなどして了解。約15分後の事故まで、飲酒運転を黙認したとされる。

 公判では、検察側が「運転手の男が相当酔った状態だとはっきり認識しており、運転を止めなければならなかった」と指摘。弁護側は「正常な運転が困難だと認識し、運転を了解、黙認した証拠はない」と無罪を主張していた。

 被害者参加制度を利用し、被害者遺族は「悪質な同乗者の犯罪にピリオドを」と危険運転致死傷ほう助罪の最高刑の懲役10年を求めていた。今回の裁判員裁判は、9日間の公判と5日間の評議が行われた。

 【熊谷の9人死傷事故】 2008年2月17日午後7時25分ごろ、埼玉県熊谷市佐谷田の県道で、元トラック運転手の男=危険運転致死傷罪で懲役16年確定=の車が100キロ超の速度で車2台に衝突。2台目の軽乗用車に乗っていた小沢義政さん、雅江さん夫妻が死亡し、男ら計7人が重軽傷を負った。事故後、男の血中から酒気帯び運転基準の8倍以上のアルコールが検出された。男の車に乗っていた大島巧、関口淳一の両被告は当初、道交法違反(飲酒運転同乗)容疑で書類送検されたが、被害者遺族による危険運転致死傷容疑での告訴を受け、さいたま地検が同ほう助罪で在宅起訴した。男や被告らに酒を提供した居酒屋経営者(47)は道交法違反(酒類提供)罪で懲役2年、執行猶予5年が確定している。

 

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