北朝鮮が平壌市の規模を半分にしたワケ

特別待遇を続けるのが困難に

 北朝鮮が「革命の首都」平壌の面積をほぼ半分に減らした。これについて高麗大学のチョ・ミョンギ教授らは「北朝鮮の食糧難と直接的な関係があるとみられる」との見方を示している。

(1)平壌も食糧難で大きな影響

 北朝鮮は最近、米国など国際社会に対して幅広く食糧支援を求めている。韓国政府筋によると、北朝鮮で1年間に必要な食糧は500万トン程度と推定されているが、ここ数年は常に100万トン以上不足しているという。これまで北朝鮮は韓国や米国などからの支援で不足分を埋め合わせてきた。しかし李明博(イ・ミョンバク)政権発足後は、韓国から送られていた毎年40万トンほどの食糧支援が途絶え、米国も食糧の分配に透明性が確保されないとの理由を挙げ、2008年から食糧支援をストップしている。韓国政府筋は「昨年、北朝鮮は“2号倉庫(軍の備蓄米)”を開放し、そこに保管されていたコメの一部で食糧難を乗り切ったが、今年はこれさえも困難な状況にある」と話す。これまで北朝鮮は住民に対し「2012年に強盛大国の門を開く」と宣伝してきたが、今やその時期が目前に迫っていることから、何としても食糧を確保しなければならない状況にある。現在、北朝鮮住民の多くは市場で食糧を買い求めているが、平壌市民は配給に依存する割合が高い。ある脱北者は「平壌の縮小は、現在の北朝鮮の経済事情が、260万人から300万人といわれる平壌市民を食べさせることができないほどに悪化した証拠だ」と語った。

(2)平壌市の構造改革

 平壌市の面積はソウル市(605平方キロ)の4倍に当たる。そのため市全体を効率的に管理するため、構造を変えようとしたのではないかという見方もある。北朝鮮は今回の再編で、自分たちが食べさせなければならない平壌の人口を50万人ほど減らすことになる。北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋は「中核階層に入れない、平壌市郊外に住む市民らを切り捨てたようだ」と話す。平壌出身のある脱北者は「今回、平壌から切り離された四つの地区は農村地域だ。これまで平壌と呼ばれてきたが、黄海道に編入されたとしても、金正日(キム・ジョンイル)総書記にとっては痛くもかゆくもない」と話した。

(3)特権階層の城壁を高める

 「革命のシンボル」と呼ばれる平壌市民たちは、この地域に住むだけでさまざまな恩恵を受ける。複数の脱北者によると、平壌市民証を持っていれば、旅行証がなくとも周辺地域への旅行が可能だという。一方、それ以外の地域に住む住民が平壌市内に入る際には、特別旅行証の交付を受けなければならない。テレビのチャンネルも、地方では朝鮮中央テレビしか見られないが、平壌では「万寿台」や「教育文化放送」が追加され、計3チャンネルを視聴することができる。電力事情も平壌と地方では比較にもならない。韓国政府筋は「北朝鮮では1990年代後半の“苦難の行軍”と呼ばれる時期に、100万人以上の餓死者が発生した。ところが平壌では、この時期でさえも配給は途絶えなかった」と語った。

アン・ヨンヒョン記者

ユン・イルゴン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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