2011年2月15日9時0分
93歳の現役ラガーマンが、奈良県天理市の天理高校・大学OBでつくるラグビーチーム「オールドベア」にいる。楕円(だえん)球との出会いから80年。「全国で5人いるかどうか」(日本ラグビーフットボール協会)という90歳以上のみが着用を許される金色のパンツで駆け回っている。
大阪市福島区の阿保壹(あぼ・はじめ)さん。13歳の時、旧制天理中学校(現・天理高校)のラグビー部に入った。スクラムから出たボールを素早く回すスクラムハーフとして活躍。すばしこい動きから「リス」のあだ名がついた。卒業前年の1934(昭和9)年にはチームを全国大会3位に導いた。
早稲田、明治の強豪大学から入学を勧められたが、両親から「戦争が起こるかもしれない。ラグビーをやってる場合じゃない」と反対され、断念した。卒業後、約8年の兵役を終えて大阪の鉄鋼メーカーに就職。休みになると天理へ通い、OBチームで汗を流した。
21年前に妻マキ子さんを亡くしてから一人暮らし。料理も掃除も洗濯もすべて自分でやる。毎日30分ウオーキングし、風呂で手足の運動を欠かさない。「規則正しい生活が健康の秘訣(ひけつ)」と、風邪以外は病気と無縁だ。
40歳以上の約90人が所属するオールドベアの試合には年数回出場している。現役時代は身長160センチ、60キロだったが、今は155センチ、50キロ。最近トライはないが、スクラムハーフとして5〜10分間出場し、往年の片鱗(へんりん)を見せる。
年齢差のある選手が思いきりぶつかる危険を避けるため、シニアのラグビーパンツの色は年代ごとに定まっている。40歳以上のラグビークラブ「不惑倶楽部」(東京)が導入し、全国に広まった。90歳以上は金。オールドベアでは阿保さん1人だ。「チームの精神的支柱」と、チームメートの神田正道さん(75)。「自分もまだまだ頑張らんと」