2011年2月15日7時0分
午後1時すぎ、金曜礼拝を終えた人々が、各方面からタハリール広場に向かった。「ガラベーヤ」という伝統的な服を着た貧しい農民や労働者、ジーンズ姿の若い女性、家族連れ。その多くは、これまでのデモで見かけたことのない顔ぶれだった。
マヘルさんは腹をくくった。「チュニジアを見て、人々の勇気に火がついた。これはもはや抗議活動じゃない。革命だ。この流れは、だれにも止められない」
それ以降、家に帰ったのは娘の3歳の誕生日だった1月30日だけ。タハリール広場周辺に泊まり込みデモを続けた。人々は次々と増えていった。
今月11日午後6時すぎ。
マヘルさんは市内をタクシーで移動中だった。ラジオでムバラク退陣を知った。車から飛び出して誰彼かまわず抱き合った。止めどなく涙があふれてきた。
マヘルさんは言う。「デモは、まだ続けるよ。エジプトが自由で民主的な社会になるまで、僕らは闘う。あきらめない。これまでも、いつか変化はくるとずっと信じていたのだから」(カイロ=貫洞欣寛)
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。