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社説:党員資格停止 これでは納得できない

 菅直人首相自身、とても胸を張れる結論ではあるまい。政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表に対する処分問題で、同党は最も軽い党員資格停止とすることで、手続きに入った。

 「原則最長6カ月」とされる処分期間を裁判の判決確定までとした点は、「けじめ」をある程度意識したと言える。だが、元代表が国会での説明に応じず政治を停滞させた責任などに照らせば最低限、離党勧告処分が筋だ。党内対立の激化をおそれた妥協と言わざるを得ない。

 今回の方針について、岡田克也幹事長は過去の処分との一貫性を重視したと説明する。役員会が処分を了承したのも「法にもとづき国会議員本人が起訴された事実は重い」ためだ。だとすればなぜ除名、離党勧告に踏み込まないのか、疑問である。

 確かに党員資格停止処分を受けると小選挙区の総支部長などの役職や会議出席停止など、権限は制約される。それでも、党所属議員としての地位が保たれる以上、元代表の党内での発言力は維持される。これが「けじめ」と映るだろうか。

 最も問われるのは首相の言動との整合性だ。首相は年頭の記者会見で「不条理をただす政治」を掲げ、あえて元代表の出処進退に言及した。加えて自らが元代表に裁判終了までの離党を促し、拒否された。

 ところが、すぐさま岡田氏に処分を委ね、結局は党としての離党勧告は見送った。元代表が説得を拒むことを見越し、あらかじめ落としどころを想定しての直談判だったとすれば、自らの努力の演出だけが目的だったとの、そしりを免れまい。

 元代表に厳しい処分を促す党内の声はこのところ、トーンダウンしている。「ねじれ国会」で予算関連法案成立の頼みとした公明党の同調を得ることは難しい。衆院での3分の2以上の多数による再可決で乗り切りを探る意見が党内に強まっている。その際、社民党の協力だけでなく、党所属議員の造反が起きないことが最低条件となるためだ。

 党内対立の激化を避けるうえでも、ここで元代表を追い込むのは得策ではない、という計算が首相らに働いたのではないか。一方で、元代表に近い勢力も、ある程度の処分はやむを得ないという判断に傾いたとすれば、まさに党内力学ゆえの妥協である。政治倫理も政治状況次第というのでは、問題だ。

 党は15日の常任幹事会で処分について議論する。元代表側からは今回の方針への反発もなお予想される。納得いかない方針だが、決めた以上は速やかに手続きを進めるべきだ。証人喚問を含め元代表の国会招致も、早急に結論を出すべきである。

毎日新聞 2011年2月15日 2時32分

 

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