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【プロ野球】

ファンと共存共栄を、自らを客観視 巨人・原監督から日本・斎藤への伝言

2011年2月15日 紙面から

 「甲子園のヒーローは投手」という既成の概念を打ち崩したのが東海大相模の三塁手・原辰徳だった。金属バット時代のニューヒーローは、いつも黄色い声援に包まれていた。洗練された都会派ムード、さわやかな笑顔で、ついた異名が「若大将」。練習試合でさえ原を追っかける女性たちも「親衛隊」と呼ばれたものだ。大学、プロと常に日の当たる場所を歩んできた若大将も、今はチームを預かる指揮官。名護の斎藤フィーバーを、監督・原辰徳はどう見ているのだろうか−。 (聞き手・井上学)

 −“原フィーバー”が始まったのは東海大相模高時代でした。当時を振り返ってください

 原「(高校)1年の夏だったですね。甲子園から帰ってきたら、突然景色が変わっていた。グラウンドでも、合宿所でも。(ファンだけでなく)メディアもそうだった。最初は疑問だよね。『なんで?』っていう。それまでは普通の高校球児だったわけだから」

 −当然のことながら、日常生活での苦労もあったのでは

 「私の場合は学校内に合宿所があったので守られていた。電車通学をしていたら大変だったかもしれない。たまに電車に乗ったりすれば、『原君だ』となったこともある」

 −自分ではどうすることもできない環境。感じたことは

 「そっとしておいてくれよ、と思う時期もあった。拒絶反応というのかな。まだ1年生だったし、先輩たちがいるという遠慮もあった。でも、ずっとそんな考え方をしていたら嫌になってしまう。だから、特に意識しないようにした。別に悪いことしているわけじゃないのだから、普通にしておけばいい。こういう(注目される)人だっているよな、と自分を客観視した上で、(自分が)特別であることを自覚する。そうすることで、重圧は減った」

 −そのように割り切れるようになったのは

 「3、4カ月はかかったかもしれない。人前に出たくない時期も確かにあった。何でだろう、ちょっと、ほっといてくれ、みたいなね。(気持ちを切り替えてから)気にならなくなった。楽になりましたね」

 −プロ入り後も日本ハム・斎藤のようなフィーバーを体験した

 「私の場合は高校の時に経験してたのが大きかった。彼もそうですが…。もちろんプロ入り後もたくさんのファンの方が来ました。でも、巨人にはたくさんの人気者がいたから高校の時とは違う。僕だけじゃないところは楽だった。(周囲を)避ける拒否的な感情があったのは高校時代の数カ月だけですね。それからはまったくありません」

 −監督や斎藤のように注目される選手側が留意しておくことは

 「われわれのファンに対する接し方ももちろんだけど、ファンの人にもルールがある。(ファンサービスにも)できる範囲がある。100人のファン全員にサインを書いてあげたくても、練習中には書けない。それでも、時間が許す中で10分だったり、15分だったり…。その代わりに『10分だけしか書けないよ』と伝える」

 −無理を通してくるファンもいませんか

 「そういう制約はファンの人も理解できます。ファンの人たちも、ある程度のルールがある。選手の側にもルールがある。それを越えたり、越えられたりということは、最もしてはいけないことですね」

 −両者の距離感というところですか

 「(選手が)ファンの人たちを下から奉るように見る必要もない。われわれは羨望(せんぼう)のまなざしで見られることも必要。そのへんの付き合い方をうまくすれば、エネルギーに変わる。共存共栄みたいな関係が、とっても良いと思う」

 −現在の斎藤フィーバーを見て、自身と重なる部分は

 「彼も高校時代からの経験値がとても大きいと思う。浮つくことなく、平常心で、ファンの人とも非常に良好な状態で付き合っているという感じがする。ファンの人が多いというのは大事なことだし、すごくうまく接していると思いますよ」

 −ファンサービスで大事なことは

 「プライベートで『今日は勘弁してくれ』という状況はある。自分一人じゃないときや、(一緒にいる)相手の人に迷惑がかかるときもある。しかし、そういう状況もキチンと言えるようにした方がいい。私は『ちょっと今日は勘弁してくださいね』と言います。何も言わずに態度だけで示すほど不愉快なものはないでしょ。こうだからこう、と言ってあげた方がいい」

 −今年は斎藤ら有望新人が多い。球界の人気回復のチャンスになるのでは

 「ファンは新しい力、新しいスターを求めている。ファンを魅了する、ファンが憧れる存在であることが最も大事。それと個性。個性とは、プロである以上は技。私服とか髪形とか生活スタイルの個性も悪くはないけど、そこに走りすぎると足元をすくわれる危険がある」

 −日本球界の未来を背負う若者に必要なことは、技を追求し、ファンを大切するという2点ですね

 「ファンあってのプロ野球。それが根底にあることを忘れてはいけませんね」

 

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