きょうの社説 2011年2月15日

◎里山里海「振興元年」 腰据えて「資源」生かそう
 石川県内で里山里海の保全、活用に向けた各種の取り組みが行われているなか、今年は 各地域にとって、本格的に里山里海の「資源」を生かして地域振興を図っていくスタートの年と位置づけられる。

 県は新年度、里山里海保全の指針「県生物多様性戦略ビジョン」に基づき、県独自の里 山づくりの手引を作成するほか、50億円規模のファンドの運用益を利用した事業を展開するなどして、地域振興を後押しする。里山里海の取り組みを一過性に終わらせることなく、各地で腰を据えた「資源」の発掘と活用に取り組んでもらいたい。

 全国的にも例がないという里山里海に特化したこれらの県の施策によって、これまでの 取り組みの推進と新たな活動の芽を育てることを期待したい。年度内に策定する「県生物多様性戦略ビジョン」の施策を官民連携で推進する体制を整えるが、各地域では過疎や高齢化、担い手の育成などそれぞれに重い課題も抱えている。県と各市町、各団体が連携を密にして各地域の実情に合わせた施策を進める必要がある。

 今年に入って里山振興に向けた幸先のよい動きがあった。小松市の「こまつSATOY AMA協議会」が関西方面からの観光客誘客に成功したケースである。同協議会は市内の4地区の町内会や各種団体が加盟して、昨年8月に発足した。これまでに隠れた「資源」の発掘に努め、誘客方法を探ってきており、住民らの地道な取り組みの大切さを裏付けたといえる。

 小松市ではコマツ小松工場跡地で里山の公園が整備される予定で、同市周辺では能美の 里山ファン倶楽部(能美市)が里山保全の国際ネットワークに参加し、白山ろくでも各種の里山活性化のイベントが行われている。里山里海の活動拠点の増加に合わせて、これまで以上に広域的な連携も求められている。人を里山里海に引き付ける魅力が増し、活動のすそ野も広がるだろう。

 「国際生物多様性年」だった昨年に続いて、今年は「国際森林年」である。それぞれの 地域で暮らしと密接にかかわってきた自然の豊かさにあらためて目を向けたい。

◎日中GDP逆転 質を競い合う経済戦略を
 日本の昨年の名目GDP(国内総生産)が中国を下回り、3位に後退したことが統計値 で確定した。「世界第2位の経済大国」という日本の枕ことばは40年以上にわたり、驚異的な戦後復興の証しとして、あるいは国際社会における日本の拠りどころであり続けた。慣れ親しんだ指定席を明け渡し、喪失感をもって受け止める人もいるだろう。

 いまの政治の停滞をみれば、日本の凋落傾向は一段と鮮明となり、悲観的な気分にもな りやすいが、冷静に考えれば、日本の10倍の人口を持つ中国が経済規模で日本を超えるのは、それほど驚くことではない。

 経済の発展が国民1人1人の豊かさにあるとすれば、中国の1人当たりGDPは日本の 10分の1に過ぎない。むしろ重く受け止める必要があるのは、日本経済が90年代初めのバブル崩壊以降、20年近い長期低迷から抜け出せていないという現実である。

 日本がこれから目指すべき道は、経済成長を安定軌道に乗せるとともに、経済の質に徹 底的にこだわり、「世界一の技術立国」を追い求めていくことだろう。成長の糧となる技術力や製品の品質で世界の群を抜く分野はまだまだ多いとはいえ、日本の優位性は相対的に下がり、韓国や中国、台湾企業などの追い上げも激しさを増している。法人税率の引き下げや規制改革など企業の国際競争力を高める政策メニューはほぼ出そろっている。あとは、それを着実に実行できるかどうかである。

 内閣府の推計では、中国の名目GDPは2025年には米国を抜き、世界全体に占める シェアは30年で24%に達する。人口が減少するなかで日本が経済を発展させるには、この巨大市場の活力を取り込むことが欠かせない。

 中国では高成長のひずみとして所得格差や環境問題なども深刻化している。ハイテク製 品に欠かせないレアアース(希土類)の禁輸措置が象徴するとおり、過度の経済依存にはリスクもつきまとう。政府の経済戦略には、そうしたリスクも織り込んだしたたかさが求められている。