2011年2月15日1時46分
【カイロ=貫洞欣寛】約30年にわたって強権支配を続けたムバラク政権が倒れたことで、政権べったりの報道を続けてきたエジプトの政府系「御用」メディアが、手のひらを返したように一斉に民主化を求める市民の動きを伝え始めた。
ムバラク大統領ら政権幹部の動向を常に1面で報じてきた政府系紙アハラムは、12日付で「市民が政権転覆」「エジプト人ら、史上初の民衆革命を祝福」の大見出しを掲げて「革命」をたたえた。
同紙はこのところ徐々にデモ隊に好意的な報道を増やしていたものの、反政権デモが始まった日の動きを伝えた1月26日付の1面トップはレバノンでの暴動に関する記事だった。カイロでの反政権デモは3〜4番手ニュースの扱いで、見出しは「数千人が失業問題などで平和的デモ」。一方、独立系紙マスリルヨウムは同じ日、1面全てをデモの報道で埋め、赤い文字で「警告」の見出しをつけ、大きな違いを見せた。
エジプト国営テレビもこれまで、反政権デモ隊の数を必ず「数千人程度」「少数が」などと過小に報道したうえ、「外国勢力の陰謀に気をつけよう」「外国メディアにスパイが紛れ込んでいる」などと外国人敵視の空気を作り上げていた。
しかし、11日夕の大統領辞任発表後から、国営テレビ局前のデモ参加者にマイクを渡し、政権批判を次々と生中継で語らせ始めた。中には「国営テレビがウソばかり伝えるから、みんな(衛星テレビ局)アルジャジーラしか見ないんだ」と叫ぶ人もいた。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。