2011年2月15日0時46分
「おれのプライドもあるから、利子1%で借りたことにしておくから」。弱みを見せることが苦しく、そう言うのがやっとだった。
生きるのは楽ではない。だが、なんとかやっていこうと思えた。すぐに送った初めての投書は、1月12日の声欄に載った。〈家族を悲しませずにすみ心の重荷がとれたことで、今も涙が止まりません〉
■
投書を読んだ鈴木さんは、関さんにあてて、短い手紙を書いた。「思い直してくれた人がいたことを支えとして、一歩ずつ前を向いて歩いて行こうと思います。大事な家族、大切になさって下さい」
ふたりで暮らした自宅の居間にひとり。遺影の夫はカメラを手にほほ笑んだままだ。(田村剛)
◇
〈自殺と遺族〉 警察庁の速報値によると、2010年の全国の自殺者は3万1560人で、13年連続で3万人を超えた。1日に86人が自ら命を絶った計算だ。
自殺対策や遺族支援に取り組むNPO法人「ライフリンク」の清水康之代表によると、1人が自殺した場合、配偶者や親、子など通常4〜5人が遺族になる。現在、国内の自殺者遺族は推計で約300万人。悲しみや喪失感に加え、自殺を止められなかったという自責の念や見捨てられたという虚無感に苦しむ遺族も少なくない。その苦しみを誰にも相談できず悩む例も目立つ。