先月(2011年1月)の26日に、アメリカのオバマ大統領は、経済、教育、財政、貿易、インフラ再構築、さらには外交、対テロ戦争、安全保障と、多岐にわたる一般教書演説を行った。
全文を読んだ上で(※全文の日本語訳を報道した国内メディアはない)、筆者が最初に受けた印象は、「内向きになったアメリカ」であった。何しろ、安全保障やテロ戦争に関する部分を除くと、オバマ大統領はほとんどアメリカ人の雇用改善のことしか語っていない。
「衰退した建設業界に数千もの仕事を与える」
オバマ大統領の一般教書演説の全文について、日本語訳を報じた報道機関はないが、英語版全文は、ウォールストリートジャーナル日本語版で読むことができる。読者も是非、ご自身の目で確認してみて欲しい。(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版『オバマ米大統領の2011年一般教書演説原稿(英文)』)
筆者が最も「典型的」と感じた箇所は、以下の部分だ。
英文:
Over the last two years, we have begun rebuilding for the 21st century, a project that has meant thousands of good jobs for the hard-hit construction industry. Tonight, I'm proposing that we redouble these efforts.
We will put more Americans to work repairing crumbling roads and bridges. We will make sure this is fully paid for, attract private investment, and pick projects based on what's best for the economy, not politicians.
日本語訳:
過去2年間、我々は21世紀の再建作業を開始した。本事業は、衰退した建設産業に数千もの仕事を与えることを意味する。今夜、私はこうした努力をさらに倍増することを提案する。
壊れかけた道路や橋を修復する仕事に、さらに多くのアメリカ人を充てるようにする。そのための給与が支払われるのを確実化し、民間投資を誘致し、政治家のためではなく、経済にとって最適な事業を選択するようにしたい。
筆者は前回の連載『暴論?あえて問う! 国債増発こそ日本を救う』の第5回『30年前より少ない日本の公共投資 「荒廃する日本」にしていいのか。未来への投資、始めるのは今』において、寿命を迎えつつある橋梁やトンネルのメンテナンスなど、日本国内で大々的な公共事業が必要だと書いた。ところが、日本でいまだに公共事業悪玉論が幅を利かせている中において、アメリカの方が先に始めようとしているわけである。
橋梁や道路など、インフラがメンテナンス時期を迎えつつあるのは、別に日本に限った話ではない。まさしく、先進国共通の課題である。さらに、アメリカでは国内の雇用改善が必須命題になっているのだから、オバマ大統領が一般教書演説において、わざわざ「衰退した建設業界に数千もの仕事を与える」と明言したことにも、大いに意義があるわけである。
ちなみに、上記の「衰退した建設業界に数千もの仕事を与える」というオバマ大統領の演説内容について、国内でそのまま報じた日本のメディアは皆無だ。理由は筆者には分からない。