【コラム】IMFの無能に対する痛切な反省文(上)

 世界的な金融危機で最悪の瞬間は、2008年9月のリーマン・ブラザーズの破産だった。その数カ月前、国際通貨基金(IMF)の幹部は「米国経済はハードランディングを回避した。最悪のニュースは過ぎ去った」と話していた。世界最高の頭脳集団IMFは、世界的な金融危機を予測する上で完全に無力だった。

 数日前、IMFは自らの無能に対する痛切な反省文を明らかにした。IMFの独立評価機関(IEO)は、なぜIMFが危機を予測できなかったのか、組織内部の問題を探った。51ページにわたる報告書の要旨は、「意思疎通を欠いたことで視野が阻まれた」という一言に要約される。報告書は意思疎通を阻んだ壁が何であり、それを乗り越えるにはどうすればよいかを考える上で貴重な資料だ。

 この報告書には心理学の用語が登場する。例えば「集団思考」は、同質的な集団であればあるほど、問題を特定の思考的枠組みの中でのみとらえ、異議を唱えることを抑えようとする傾向を指す。IMFの経済学者は、先進国で危機が発生する可能性は極めて低く、金融機関の問題は市場の自律的な機能によって解決できるという集団思考から脱することができなかった。

 IMFがその機能を発揮できなかった別の要因としては、「サイロ」が挙げられる。サイロとは元は穀物や牧草を貯蔵する煙突型の倉庫を指すが、ここでは「組織内での部署間の壁」または「部署利己主義」を意味する。同じIMF職員でありながら、金融専門家とマクロ経済専門家がそれぞれ独立しており、金融とマクロ経済が複雑に絡み合った金融危機の発生を思い描けなかった。

 IMFが自らに下した処方せんは、韓国の企業や政府にも有効だ。まず、構成員が率直に意見を述べ、異なる意見が尊重される環境をつくるべきだ。構成員の人的な多様性を拡大することも一つの方法だ。現代カードは金融機関だが、職員の半分以上が金融分野以外の人材だ。同社の丁太暎(チョン・テヨン)社長は「チョコレート会社だからといって、すべての社員がチョコレート専門家である必要はない」と理由を説明した。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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