先週末、
「ホスニ・ムバラクは大統領にとどまるべきだ」とフランク・ウィズナー元駐エジプト大使は語ったという。ウィズナーはアメリカ政府が特使としてエジプトに派遣していた人物であり、その発言の影響は大きい。エジプト庶民のアメリカに対する憎しみを一層、強めることになるだろう。
本コラムではすでに書いたことだが、ウィズナーの父親、フランク・ウィズナー・シニアは第2次世界大戦から戦後にかけてアレン・ダレスの側近として破壊工作(テロ行為)を指揮していた。
親子を一緒にすべきでないという意見もあるだろうが、情報機関の世界では秘密の保持という意味もあり、家族のつながりが重要な意味を持つ。ブッシュ家もそうした家族のひとつだ。
ウィズナー・ジュニアは1961年から国務省に勤務、後にザンビア、エジプト、フィリピン、そしてインドで大使を務め、1997年に同省を退職した。この年、情報機関と関係の深いことで有名な巨大保険会社AIGの重役に納まり、2009年に同社を辞めると、パットン・ボグス法律事務所の顧問に就任している。
この法律事務所が問題。エジプトの軍や経済開発局などは、エジプト経済界と同様に、この法律事務所の顧客なのである。つまり、ウィズナー・ジュニアはエジプトの独裁体制を支えてきた勢力の手先だということになる。当然、ムバラク体制を護持しようとする。
ウィズナー・ジュニアがエジプトを訪れた直後、民主化を要求して広場を占拠していたグループに「親ムバラク派(警官、与党メンバー、カネで雇われた人々など)」が襲撃しているが、その後の展開はウィズナー・ジュニア/パットン・ボグス法律事務所のアドバイスによるものだった可能性が小さくない。当然、アメリカ政府も無関係だとは言えない。当時、日本のマスコミはウィズナー・ジュニアがムバラクに大統領を辞任するように説得したかのように報道していたが、これは「ガセネタ」だったわけだ。
最終更新日
2011.02.07 13:04:32