個人を重視するスウェーデン、崩壊する家族
産経新聞 2月12日(土)21時28分配信
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平日のスウェーデンの喫茶店。育児休暇中の父親「カフェラテパパ」たちが集う=ストックホルム(写真:産経新聞) |
次男のアロルちゃん(1)を抱いた会社員、グスタフ・デイノフさん(32)は「今は妻が働いているからこの子を私が育てている。育休の間は子供と遊べて、子育ても勉強できて楽しいですよ」と話す。
同国では体罰を法律で禁じた結果、体罰に代わる子育てが模索されてきた。男性が積極的に育児に関わるようになったのもその表れだという。共働きが基本の同国では育児休暇制度が普及し育休中の給与も1年以上80%が保障される。福祉サービス充実の観点から保育所も多く、残業の習慣がないため父親の帰宅時間も早い。精神的、経済的にも余裕をもって、家族の中で男女が効率よく役割分担をしているようにもみえる。
だが同国の子育ては、必ずしも両親と子供が1対1で行われているわけではない。スウェーデンの家族のあり方に詳しい民間シンクタンク研究員、中間真一さん(51)は、「よくも悪くも極めて合理主義の国民。無用な我慢はしないので簡単に別れたりくっついたりする。法律婚は手続きが面倒でその結果、事実婚であるサムボ(同棲)やシングルマザーが当たり前になっている」と話す。そのため家族の縛りや制約、偏見は全くといっていいほどないのが現状だ。
親が離婚(パートナー解消)をして新しいパートナーと住めば、またそこで新しい子供が生まれる。次第に異父(母)兄弟が増えていくという複雑な家庭環境はこの国ではめずらしくない。中間さんは言う。「子供に話を聞くと『急に新しい父親だと紹介されて訳が分からなかったしつらかった。もちろん本当の両親と暮らすのが一番ハッピー。でもお母さんにも選択の権利があるから』と言うんです」
「自己選択・自己責任・自己決定」が重視される同国では、離婚と再婚、カップルの解消と成立が繰り返され、婚外子率は6割近くに上る。日本が約2%であることを考えると圧倒的に多い。一部にはスウェーデンの婚外子の増加を少子化に歯止めをかけたとしてプラスにとらえる見方があるが、高崎経済大学の八木秀次教授(48)はこうした複雑な家庭環境が子供の内面にもたらす負の側面に警鐘を鳴らし「心身が不安定になり、行き場がなくなって薬物や酒、非行に走る率が高い」と指摘する。
家族の絆を守る会の岡本明子事務局長も「婚外子が6割近いというのはすでに家族が崩壊している証拠。婚外子の増加で出生率だけ上がっても仕方がないのではないか」と疑問を呈する。岡本さんは「『個人としての人間』を追求し、自由を求めれば家族は煩わしくもある。でも欧州のように宗教的なつながりを持たない日本にとって、家族は社会を存立させる、もっとも大切なもの」と訴える。
スウェーデンは移民が多いことでも知られる。子供のために活動するNGO「セーブ・ザ・チルドレン・スウェーデン」のオーサ・ランドベリ代表(47)は「私たちが体罰禁止を主張しても、移民とは文化的な違いがあり、浸透していないことはわかっている」とし、続けた。「子育ては文化的な要素が大きい。私たちの国をひとつの参考として、それぞれの国や家庭に合った方法を見つけ出せばいい。それはきっと次の世代のお手本になるはずです」(田中佐和、写真も)
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最終更新:2月12日(土)21時28分
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