もんじゅ:「設計ミス」対応追われ…再開延期

2010年12月16日 23時14分 更新:12月16日 23時20分

3者協議に臨む西川一誠知事(左)、高木義明文部科学相(右から2人目)、大畠章宏経済産業相(右)=東京都千代田区で2010年12月16日、安藤大介撮影
3者協議に臨む西川一誠知事(左)、高木義明文部科学相(右から2人目)、大畠章宏経済産業相(右)=東京都千代田区で2010年12月16日、安藤大介撮影

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について日本原子力研究開発機構は16日、すべての試験を終えて本格運転に入る時期を、12年度末から13年度内に延期すると発表した。原子炉容器内で今年8月、炉内中継装置(重さ3.3トン)が落下したトラブル対応のため。同日、西川一誠福井県知事が高木義明文部科学相、大畠章宏経済産業相と東京都内で協議し、延期を合意した。95年12月のナトリウム漏れ事故で運転を停止し、今年5月、14年半ぶりに運転を再開したもんじゅだが、再度のトラブルに、運転再開を危ぶむ声もある。【酒造唯、安藤大介、関東晋慈】

 16日の三者協議で西川知事は「(福井県民の不安を)簡単に考えるべきではない」と訴えた。95年のナトリウム漏れ事故から今月8日で15年。西川知事は「万一、ナトリウム漏れ事故のようなことがあれば、もんじゅそのものの存立さえ難しくなる」と、厳しい口調で国に対応を迫った。

 事故当時、機構は「原子炉自体に損傷はなく、装置は安全に引き抜ける」と楽観していた。だが装置は落下の衝撃で変形し抜けなくなっていた。調べたところ、装置をつり上げる部分でネジが緩み、機器が不必要に回転。つり上げるためのつめが装置にかみ合わなくなっていた。

 機構は国への報告書で「回転防止措置が施されていなかった」と事実上、設計ミスを認めた。95年の事故も、2次系ナトリウム配管の1本の温度計が「設計ミス」で折れたことが原因だった。

 もんじゅは、原子炉の熱を取り出すのにナトリウムを使うのが最大の特徴だ。ナトリウムは空気に触れると激しく燃焼するため取り扱いが難しい。今回のトラブルでも、この「泣きどころ」が関係者を悩ませている。

 ナトリウムで覆われた原子炉内は視界が悪く、トラブルが起きても原因特定が極めて難しい。機構は今回、原子炉のふたの一部を外して装置の外枠ごと取り出す計画だが、ナトリウムが付着していることから、外枠ごと収められる大きな「受け皿」が新たに必要だ。装置に新たな欠落部品があれば、炉内でそれを探す作業が必要になり、工程はさらに遅れる。

 京都大原子炉実験所の元講師、小林圭二さんは「原子炉容器内のトラブルは一度起きれば致命的で、もんじゅの本質的な欠陥だ。設計がお粗末過ぎ、こうした事態を軽視していたとしか思えない」と批判する。

 ◇原子力大綱を見直しへ

 政府は年内にも、国の原子力利用の基本方針となる「原子力政策大綱」の見直しに着手する。理由について原子力委員会は「もんじゅの運転再開が遅れていることなどを、今後の国の施策の基本的考え方に反映させるべきだ」と説明する。地震などによる商用原発稼働率の低迷に加え、もんじゅや使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)のトラブルによる遅延など、核燃料サイクルの停滞も重要な検討事項だ。

 新大綱策定委員長を務める近藤駿介・原子力委員会委員長は「(炉内中継装置を)年内に抜くことができなかったことは、ナトリウム漏れ事故から15年、運転が中断したことによる最大の問題。(技術者らが)知識を継承できていない可能性がある」と批判する。

 機構によると、もんじゅの総事業費は9032億円(80~09年度)。今後、年間約230億円の維持管理費がかかる。

 経産省の専門委員会「もんじゅ安全性確認検討会」で委員を務める斉藤正樹・東京工大教授(原子炉安全工学)は「事故は起きないはずだという現場の思い込みがあったのではないか。再びトラブルを起こして運転延期を繰り返さないためには、当時の関係者や外部の意見を聴くなどの対応が重要だ」と指摘する。

 ◇高速増殖炉◇

 商業用原子炉などの使用済み燃料から取り出したプルトニウムを燃料に運転する。使った以上の燃料を生み出すため「夢の原子炉」とも言われ、国の核燃料サイクル政策の中核施設に位置付けられている。国は高速増殖炉について、50年までの実用化を目指している。

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