虐待:親権2年停止 「喪失」に加え新設へ 法制審部会

2010年12月15日 19時35分 更新:12月16日 0時39分

 親による児童虐待から子供を守る親権の在り方を検討してきた法制審議会(法相の諮問機関)の親権制度部会は15日、現行の親権喪失制度に加え、親権を最長2年間停止できる親権停止制度を導入することなどを柱とする答申の要綱案を決定した。法制審は来年2月に法相に答申する見通しで、法務省は来年の通常国会への民法改正案提出を目指す。

 虐待が認められた場合に親族や児童相談所が親権喪失を申し立てる現行の制度は、期限の定めがないため、いったん親権を喪失させると回復させるのが難しい。このため、自治体などから「結果が重大過ぎて活用をちゅうちょする」といった声が上がっていた。

 要綱案によると、親権停止制度は、虐待を受けた子供本人も、申し立てをできることにした。親権停止を判断する家裁の審判は、本人を含め、親族、未成年後見人らの申し立てで開始される。

 虐待要因がなくなるのに要する期間を考慮し、児童福祉法が定める施設入所が可能な2年間を限度に、親権を停止できる。期間中に虐待が懸念されなくなれば、改めて家裁の手続きで親権を回復させられる。

 日常的な暴力で養護施設などが子供を保護した場合、親権の停止中に施設などが親子関係の再構築を支える。必要な治療を受けさせない「医療ネグレクト」の場合でも、停止の間に必要な治療を施すことが可能になる。

 さらに、民法の親権規定に「子の利益」を明記し、監護・教育する権利と義務があるとした。併せて「子を懲戒し、または家裁の許可を得て懲戒場に入れることができる」との規定のうち、懲戒権は残し、実体のない懲戒場に関する規定は削除するとした。

 また、虐待する親に代わって財産管理などを行う未成年後見人について、「1人でなければならない」としていた従来の規定を改め、必要な場合には複数を選任できるとし、児童擁護施設など法人も可能とした。未成年後見人の引き受け手不足が背景にあり、複数で職務を分担して負担軽減を図る。【石川淳一】

 ◇解説 親子関係の修復見据え

 法制審の部会がこれまで「聖域」とされてきた民法の親権制度見直しに踏み切ったのは、児童虐待被害が増加し、事態が悪化していることが背景にある。警察庁によると、昨年摘発した児童虐待件数は335件(被害児童347人)で過去最多。現場からは、実情をふまえた法整備を求める声が高まっていた。

 現行の親権喪失制度は、親権の回復が困難なことから親子関係を断絶する制度だとも指摘されてきた。だが、実際には、虐待さえなければ親と暮らしたいと希望する子供は多いという意見もある。

 虐待児童を守る一方で、親子関係を修復させる必要性も求められてきた児童相談所などは、難しい判断を迫られてきた。こうした実情を反映し、実際に児童相談所から親権喪失の申し立てがなされたのは年10件程度にとどまる。

 児童虐待防止には、07年の児童虐待防止法改正で児童相談所に強制調査権を与えるなど、救済強化に力点が置かれてきた。だが、親子関係の修復を見据えた方策も併せて必要なのは確かだ。こういった意味で、親権の「停止」は、現状に見合った法整備と言えよう。【石川淳一】

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