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[25978] 【習作】今更だけどシスプリをちょっとえげつなくしてみる(15禁?)
Name: 真田蟲◆e0382b41 ID:fc160ac0
Date: 2011/02/12 20:29
気分転換に押入れを整理していたら懐かしいものを見つけたのでさらに気分転換の為にssにしてみました。
当時の記憶をおぼろげながらに振り返ると、そういえばこのキャラ達って妹ってことになってるけど
本当はどういう家族設定だっけ?とか思って作者の趣味を混ぜて妄想してたものを形にしただけのものです。
よって個人的趣味であの作品をえげつなくしていけたらなと思ってます。
自分では15禁相当だと思っているんですけど、もし18禁だろと思う方がいたら教えてください。板移動しますんで。
あとこの作品は作者の処女作です。
基本作者の気分転換の為の娯楽ものなので以下に該当する方はまわれ右を推奨します。


・処女作とか文章に不安のあるものなんかよんでられない。
・エロやグロ(たぶん15禁くらい?)が駄目。
・ややこしい人間関係なんて嫌い。
・不定期更新とか読む気しない。
・○○はこんなキャラじゃない。
・○○の設定違うのが認められない。

大丈夫な方、どうぞお読みください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


木々が茂った森の中。
空に浮かぶ月の光は、重なり合う葉に遮られて地面までは届かない。
その暗闇の中を一つの影が疾走していた。
まるで修行僧のような、ぼろぼろの格好に大きく長い数珠を首にかけた男。
しかしその表情はとてもではないが悟りを開いたような顔には見えなかった。
それは背後から迫るものから与えられる死のイメージからくる恐怖と、逃げなければという焦燥感。
焦燥と恐怖が男の表情をこわばらせている。
ただ森の中には男が駆けることでできる足音と葉や枝が彼の体にあたり擦れる音、
なにより荒く乱れた呼吸音が響く。
前方がよく見えない暗闇の中、葉枝が自身の顔や体を傷つけるのをいとわずに走る。
そのような小さな傷など気にしてはいられないのだ。
もし気にして立ち止まって、後ろから迫るモノに捕まりでもすれば自分は死んでしまうのだから。


「ぜ、はぁ、はぁ、・・・。」


心臓が爆発しそうなほどに早鐘を打っている。
耳に聞こえる自身の乱れた呼吸がより焦燥感をあおり、恐怖心を高め、より痛いほどに鼓動する悪循環。
アレがどこまで追ってきているのか後ろを振り返って確認したい。
しかしその動作で生じる小さなタイムラグが何倍も自分の死ぬ確率を高めることになるは明白だった。
だから男はひたすら前を向いて走った。後を振りむいてはいけない。
自分の耳には、自分一人の足音しか聞こえない。
おそらく相手よりも走る速度は自分の方が早いと判断する。
相手の足音が無音なだけかもしれないが、そうでなければ既に自分は死んでいるだろう。
楽観的ではあるがそう思っていないと頭がどうにかなりそうだ。
このまま森を抜けて町の、人目の多いところまで逃げよう。
なりふりなど構ってはいられない。そこまで逃げれば、相手も一般人を巻き込もうとは思わないはず。
あとは人ごみに紛れるか、人質をとってもいい。
何か、自分が生き残る方法がみつかるかもしれない。
ただその希望にすがって男は走り続けた。
どれくらいの時間走り続けただろうか。
前方に木々の隙間から小さな明かりが見えた。


「・・・は、・・・はは・・・もうすぐ・・・だ・・・。」


町が見えてきた。
逃げきる未来がすぐそこまで来ていると確信し、自然とこわばっていた頬がゆるむ。
木々の間を駆け抜け、広い空間へと飛び出した。


「は・・・はは・・・は?」


しかし森の茂みを飛び出して最初に見たものに足が止まってしまった。
いままで全速力で走っていたために慣性の力で前に倒れそうになる。
男がたどり着いたのは森の境目にある道路。
ちょうど正面、彼がいる側とは反対車線の脇に建てられた街灯の明かりの下。
そこに一人の男がもたれかかるようにして立っていた。
落ち着いたデザインのコートを羽織った十代後半と見られる青年。
その青年の瞳が、いましがた森から飛び出してきた自分を捉える。


「・・・ひぃ!?」


青年の目は冷たく、それでいてねっとりと男を見ていた。
まるで蛇に睨まれた蛙のように硬直してしまう。


「はぁ、相変わらず詰めが甘いな、可憐は。」


青年は一つ小さなため息をつくと、街灯に預けていた重心を取り返すしぼやきながらもまっすぐと立ってこちらを見据えた。
コートのポケットに入れていた両手を出し、だらりと下ろす。
一見、体のどこにも力が入っていないかの様に見えるが青年の目は獲物を狙う蛇のよう。
その体勢が攻撃態勢であるのだと男は正しく理解した。
男は青年の背後に巨大な蛇の姿を幻視し、自分が一息に飲み込まれる相手の射程にいることを悟る。
それ以上に、自分ではこの化け物に勝てないことを悟った。
逃げ切れるという希望が見えたかと思えば、逃げた先には別の化け物が待っていた。
なんて悪い冗談だ、悪夢か・・・と男は思った。
しかしこれは夢などではない。そして次に聞こえてきた声に男はさらに絶望した。


「あれ、お兄ちゃん。どうしたの?」


自分が今しがた出てきた森。
そこからがさがさと音をたてて一人の少女が姿を現した。
フリルのついた品のいいシャツにロングスカート、黒髪を長く伸ばして一部だけ三つ編みをした十代前半の少女。
容姿は愛らしく、まるでおとなしい文学少女といった雰囲気だ。
しかし、ここは深夜の森の中だ。時間と場所に似つかわしくない格好をしている少女。
昼の町中にいれば違和感がないだろう普通の服装だが、今はその服装のせいで余計に異様に見える。
この時間、こんな場所に普通の少女がいるはずがない。
実際そのとおりであってこの少女は普通じゃない。
現に彼女は自分を殺そうとしている、まさに先ほどまで自分を追っていた相手なのだから。
立ち止まってしまったせいで追いつかれてしまった。


「お前のことだから、また取りこぼしたりしてるんじゃないかと思ってな。」


「もう、私だってちゃんと最後まで仕事できるよ。」


少女にお兄様と呼ばれた青年は少し気取ったように肩をすくませる。
その言葉に頬を少し膨らませて腰に手をあて、私怒ってますといったポーズを取る少女。
しかし本気で怒っているわけでもないようで、目はどこか嬉しそう。


「現に一人逃がしてるじゃないか。」


「大丈夫だよ、完全に逃げられる前に仕留めるから。
 ほら、こうやって追い付いてるでしょ?
 他は全部始末したし、あとはこの人で最後よ。」


「まぁ、そうだな。」


男をはさんで会話する男女。
その眼は互いが互いを慈しんでいるかのような優しい目をしていた。
しかしその会話の内容は物騒なもので、男は生きた心地がしなかった。
くそ、どうする?まさに前門の虎後門の狼といったところか。
どちらに向かっても勝てる気が全くしない。


「さて、あんたどうする?」


青年が男に問いかける。


「あんたは俺と可憐、どっちに殺されたい?」


おそらく横に逃げようとしたところでどちらかが自分を殺せる位置にいる。
死にたくないのであれば前の青年か後ろの少女のどちらかを突破しなければならない。
究極の二択、ただしどちらを選んでもおそらく自分では勝てない。
だからこそのどちらに殺されたいかという問いなのだろう。
どうする?前にいる青年は得体が知れない。
どんな力があるのか、わからない。
どうする?背後の少女は、自分をさっきまで追っていた相手だ。
能力はわかっている。そう考えればまだ少女を相手にしたほうがいいかもしれない。
だが肝心のその能力が問題だ。
相対すれば逃げる前に今度こそ殺される。
ここは・・・


「くっ、・・・ぅっ、ぉおおおおおおお!!」


男は前方の青年に向かって走り出した。
首にかけていた数珠を外し振りかぶる。
その数珠は淡く光ると、棍へと変化した。
男はその棍を勢いをつけて青年に叩きつけようと振りかぶる。
そこで青年の口元がわずかに釣り上がるのを目にし、


「・・・ぐぎっ!?」


次の瞬間、気づいた時には男は顔面を掴まれ地面に叩きつけられていた。
あまりの衝撃に手から棍がどこかへと飛んで行ってしまう。
視界のほとんどを青年の掌がふさいでいる。
おそらくアイアンクロ―のような状態で抑え込まれているのだろう。
叩きつけられた後頭部が焼けるように熱い。
青年の指が顔に食い込み、めきめきと骨格が悲鳴をあげている。


「ぐっ、がぁああ!?」


圧迫され、自然と瞼が開き、眼球が飛び出しそうになる。
自分の顔から相手の手を引きはがそうとこころみるがびくともしない。
そのまま頭部を持ち上げられる。
自然と男の体も起き上がり、足がつかない高さまで中に浮かされる。
じたばたとみっともなく足を動かしてみるも地に足は付かず。
苦し紛れに青年を蹴りつけても変化は見られない。


「俺を選んだことは評価するよ。・・・だが、それだけだ。」


めりめりと頭蓋骨が歪む音に混じり、青年の声が男の耳に聞こえる。
その声を最後に男の世界から音が消えた。

ぐしゃり、と何かが潰れる音が夜の闇に響いた。







序章 1





街灯の明かりに照らされながら俺、加我智辰巳はため息を吐いた。
自身の右半身は、たった今頭部を握りつぶした男の返り血で染まっている。
いつからだったか、相手を殺すことに自身の感情が動かされなくなったのは。
仕事とはいえ、初めて人を殺した時は何かこう、胃液とともに湧きあがる物があったはずなのだが。
今では相手を殺したことよりも、返り血でコートが汚れてしまったことの方にため息がでる。
死体を前にして、買ったばかりのコートのことを考えてしまう自分。
随分とまぁ、一般的な感性とずれてしまったなぁと感じる。


「あ~あ、お兄ちゃんのコート汚れちゃったね。
 せっかく新しく買ったばかりだったのに。」


似合っていたのにもったいない、と残念そうにする現在14歳の妹を見る。
こいつはすでに、いや、最初から誰かを殺すことに対して何の感情も抱いていないようだった。
俺が中学生のころは、さすがに何か思うところがあった・・・はず。
今の自分を一般社会から見れば異常であるとも、一応自覚している。
まぁ自覚しているからと言って自分を変えようとは思わないが。
でも、妹の可憐はおそらく自分の異常性を自覚していない。


「うふふ、最後はお兄ちゃんに取られちゃったけどちゃんと一人でもできたでしょ?」


足もとの死体を踏み越えて、暗に褒めろと上目使いでくっついてくる可憐。
俺はとりあえず自分の胸元の高さにある可憐の頭を、髪をすくようにして撫でてやった。


「頑張ったな~、可憐。よくやった。」


「ふふ、はい、可憐頑張りました。」


俺にくっついたせいで可憐の頬に赤いものが付着する。
だが我が妹はそんなことを気にする様子もなく、嬉しそうにえへへ、とはにかむ。
あ~もう、可愛いなぁ。
このままずっとこの甘えん坊な妹の頭を撫で続けてやりたい衝動に駆られるがそうもいかない。
さっきからズボンのポケットに入れているマナーモードの携帯が、早く出ろとぶるぶると震えている。
番号を見てみれば、内閣特殊対策室の岩波さんだった。
俺は可憐の頭を撫でるのを中断し、電話に出る。


「もしもし、加我智です。」


「ああ、辰巳君お疲れ様。岩波です。仕事の方はどうでした?もう終わりました?」


「ええ、たった今終わったところです。いつも通り後始末お願いします。」


「はい、了解。あとはこっちに任せてもう帰ってくれて構わないよ。」


「わかりました。それじゃ。」


事務的な会話を終えて電話を切る。
通話中、ずっとこっちを見上げていた妹を見る。


「さて、帰ろうか。」


「うん。」


満面の笑みで頷く可憐。


「ねぇお兄ちゃん。車まで手つないでいってもいい?」


「うん?かまわないよ。」


「ふふ、ありがとう。」


そう言って俺の手を取り、微笑む。
この道を町の方向に少し降りて行けば、いつも通り迎えの車が待機しているだろう。
俺たち二人は、手を繋いだままゆっくりと歩き出した。





加我智家。

それは日本を昔から、霊的側面から守護してきた家。俗に御霊三家と呼ばれるうちの一つの一族だ。
父親の源蔵は今の加我智家頭首、つまり俺は次期頭首というわけだ。

加我智は、他の二つの家と比べ戦闘に特化している面がある。
それはひとえに一族の血に宿る異能の力のせいだ。
加我智の血を色濃く受け継ぐ者には、異能を持つ者が多い。
人によって違うがそれは火を操ったり、水や氷を操ったり、念力だったりと様々なもの。
かくいう俺も一応異能持ちである。まぁ上記したようなわかりやすく派手なものではないが。
今現在、俺の膝の上に頭を乗せて寝息を立てている可憐なんかは氷を操ることができる。
ちょっとうらやましい。
普通の人間と違い、何故そんな能力があるのか。
それは加我智の血には祀っている蛇の血が混ざっているからである。
白姫という蛇の神霊と代々異類婚を繰り返してきたため、その血に白姫の力を宿しているのだ。
一代に一人、加我智の男は白姫の婿となり子供をなす。
その子供は加我智の歴史が始まってから何故か女の双子ばかりである。
白姫には女しかいないため、おそらくそれが関係しているのだとは思うが、そういうものとしかわかっていない。
長女は白姫の一族に、次女は加我智に引き取られ育てられる。
こうして長い間、白姫という神霊と関係を結び力をその血に宿してきたのだ。
ただ、その弊害として加我智の血が濃ければ濃いほど近親相姦願望が生まれるというものがある。
同じ血を持つ者にひどく惹かれてしまうのだ。
普通、中学生にもなればここまで兄にべったりな妹というのもないらしいが可憐がこうも俺にべったりなのは
もしかしたら、もしかしなくても加我智の血が原因でもあるだろう。
まぁ、俺の周りには世の中の普通とやらにあてはまりそうな奴はいないからあまりピンとこないが。
話が少しそれたな、もとの話題にもどそうか。
異能を持つが故に、加我智は日本の神霊的な事件をその力を持って解決する任を昔の帝とやらに命じられたというわけだ。
簡単に言ってしまえばオカルト的な問題を異能という暴力で片付けるのが仕事だ。
今は内閣特殊対策室というところが加我智に仕事を回してきている。
昔は物の怪や妖といった最近では妖怪と総称されるような化け物や、道を誤った修験者なんかも相手が主だったんだが、
国際化の影響か、他所の国から流れ着いた化け物や、好き勝手に暴走する宗教活動を鎮圧する仕事もある。
今回は、暴走して犯罪に走るようになった修験者の一団が相手だった。
もっとも相手の人数が少ないこともあったので可憐に経験を積ませるために今回は一人でさせてみた。
だから俺はあまり疲れていない。最後しか動いてないしな。
最後に逃がしそうになったものの、出来は上々と言える。
妹が仕事がだいぶできるようになったことを喜ぶべきか。
それとも殺すことに対して忌避を感じていない妹に対して悲しむべきか。
兄としては微妙ではあるけれど、加我智の者としては歓迎するべきことなのかな?


「・・・今さらか。」


俺は何となく窓の外、流れる景色の中、空に浮かぶ月を見上げた。







今日はお仕事の日でした。
しかも今回はお兄ちゃんは付いてきてくれるけど、実質一人でのお仕事。
なんでも、可憐もそろそろ自分一人である程度できるようにならないと駄目だよー、とのことです。
一人で最初から最後まで全部するのは初めてだったから、私は最初ちょっぴり不安でした。
でもお兄ちゃんが頑張れって言ってくれたから元気が出ました。


「大丈夫、私だって一人でちゃんとできるよ!見ててねお兄ちゃん。」


そう言うと優しく微笑んで笑ってくれるお兄ちゃん。
なんだかお兄ちゃんの笑顔を見ていると胸のあたりがぽかぽかしてきます。
よーし、頑張るぞー。
私は張り切って今回の仕事場所になる森に入って行きました。
相手がどこにいるかは、千影ちゃんに借りた影千代さんが教えてくれます。
影千代さんは烏の姿をした千影ちゃんの使い魔で、探索が得意なんだそうです。
あっ、千影ちゃんというのは私の姉妹の一人です。
いろいろできるすごい子なんですよ?
服に引っかかりそうな枝や葉を、氷で作った刃で切り裂いて進みます。
影千代さんに先導してもらった先にその人達はいました。
なんだか修験道?っていうんでしたっけ?
そういう風な格好をした男の人たちが4人、火を囲んで座っています。


「誰だ!?」


その中の一人の男の人が、私に気づいて石を投げてきました。
飛んできた石を氷の刃で切り落とします。
私を見据えて、全員が素早くたちあがり構えています。
なんだか警戒されているっぽいです。
とりあえず見つかってしまったので挨拶することにしました。


「えっと、加我智可憐といいます。皆さんを殺しに来ました。
 どうぞよろしくお願いします。」


お辞儀をして顔をあげてみると眼前に一人の男の人の拳が迫っていました。
うひゃあ、と素っ頓狂な声を出してしまいました。恥ずかしい。
びっくりしたけど、攻撃が当たる前に全面に氷の壁を作って防御に成功しました。
危ない危ない。油断しちゃいけないってこの間お兄ちゃんに注意されたばっかりなのに。
もう・・・私ってお馬鹿さんなのかなぁ?
私に攻撃が届かなかった人は後ろに飛んでお仲間の所に戻ります。


「もう、女の子の挨拶中に攻撃するなんて。デリカシーがないですよ?」


腰に手を当てて怒ってますとアピールします。
でも私の言葉なんて男の人たちは聞いていないようです。
皆武器を構えてこちらを睨んでいます。


「皆の者、油断するな。女子といえど加我智の化け物だ。」


真ん中にいるリーダーさんみたいな人がそんなひどいことを言います。


「もう、女の子に化け物だなんてひどいです。ぷんぷん。」


可憐、泣いちゃいますよ?
でも泣く前にちょっと怒っちゃいます。さっきの不意打ちといい、私ぷんぷんです。


「くっ、何がぷんぷんだ。馬鹿にしているのか貴様!!」


先ほども私を殴ろうとした人が突っ込んできました。
なんでこの人は怒っているんだろう?
わからないけど、たぶんこの人があの中では一番失礼な人。
とりあえずお仕置きもかねて楽には殺しません。
こちらにたどり着く前に下半身を氷漬けにして動きを封じます。


「なっ!?」


驚いているようですが、すぐに氷の部分を殴りつけて壊そうとしています。
だから腕も凍らせて胴体と首から上しか動かないようにしました。


「そこでおとなしくしておいてくださいね?」


そういってもがくその人を尻目に、私と男の人たちの周囲に氷をドーム状に張って即席の檻を作ります。
これでみんな逃げられません。
他の人を殺すのをゆっくりと鑑賞させてからこの人はゆっくりと殺しましょう。
皆さんがびっくりしている間に足もとに氷を張って、その上を滑り他の一人の懐に入ります。
その人が私に気づきますけどもう遅いです。
下から氷の刃を一閃させます。それだけでほら、体の真ん中でまっぷたつ。
血が飛び散ると服が汚れるので断面も氷漬けにします。これで血が飛び散ることもありません。


「ぬぅ、おおおおおおお!!」


リーダーさんが棍をもって私に向かって振り下ろして来ました。
それを横に滑ってかわします。
でもかわした所に別の人がいて、棍で突いてきました。


「ひゃあ!?」


とっさに身をよじって回避します。今のはけっこう危なかったです。
私が回避している動きの間に残るもう一人が同じく棍で突こうとしてきました。
今度は大丈夫。反身をずらして避けて、すれ違いざまに相手の目に氷柱を叩きこみました。
たぶん脳まで貫通しているはずなので殺せているはず。
背後でどさっと何かが倒れる音がしているのできっと大丈夫でしょう。
でも振り返って確認はしません。目の前にまたリーダーさんがいるからです。


「はぁああ!!」


リーダーさんは横に勢いよく棍を薙ぎました。
ものすごく大きな風斬り音がして、後ろに飛んで回避したのに風圧が襲いかかります。


「きゃあ!?」


何も痛くはなかったけど、風でスカートがぶわりとめくれあがってしまいました。
急いで手でスカートを押さえます。
私は恥ずかしさでたぶん顔が真っ赤になってたと思います。
あの年でスカートめくりするなんて変態さんです。痴漢さんです。
今はいているパンツ、まだお兄ちゃんにも見せてないのに。
怒った私はリーダーさんに向かって走りました。
走りながら氷柱を数本投擲します。
そのすべてを棍棒を回転させて防がれましたが別にそれはいいです。
この人は一撃では殺しません。
相手の間合いに入る手前で横に滑ります。
いきなりの軌道の変化に相手は一瞬動きが止まりました。
その隙にもっと近づきます。私の指先が彼の手に触れるくらいまで。
それ以上は近づくことができませんでした。
また彼の棍の一撃が来たからです。私は急いで距離をとりました。
やっぱりこの人は他の人よりも強いです。なかなか懐に入れません。
さっきも私の指先が一瞬触れただけでした。でも、それで十分。


「がっ、ぎ、ぎゃああああああああああああああああああ!!」


それまで私を睨んでいたリーダーさんの表情が一変しました。
腕を押えて苦しんでいます。それはそうでしょう。
でも苦しいのは、痛いのはこれからです。
彼の左腕から真っ赤な氷柱が何本も生えてきました。
ぶちぶちと音をたてて皮膚を突き破りながら生えてくる小さな氷柱たち。
肘から下がぶらりとぶらさがった状態になりました。


「ぐひぃ、ひぎ、・・・・ぎぃいい!!」


次は左の太ももから氷柱が生え出します。
次は右の脹脛から、その次は右腕から・・・
次々と真っ赤な氷柱が皮膚を突き破って生えてきます。
でもその氷柱は彼の血液そのもので、傷口はふさがっているのでそれ以上出血しません。


「あ・・・か・・・かが・・・」


血液が氷柱になって残りの身体機能も上手く働かなくなってきたからか、叫び声が無くなってきました。
そのかわりびくびくと痙攣してます。
涎や涙や、おしっこまで漏らして気持ち悪いです。
このくらいでもういいや。汚いし。
指をぱちんっと鳴らすと彼のまだ残っていた皮膚が全てはじけ飛びました。
跡に残ったものは真っ赤な氷柱が一杯生えた何かの塊。
これでよし。あとはさっき捕まえておいた一人だけ。


「さてと・・・あれ?」


振り返って一番初めに拘束しておいた男の人の方を見ると、そこはもぬけの殻でした。
氷のドームにも穴が開いています。


「あらら、逃げられちゃった。影千代さーん。」


どうやら私が他の人と戦っている間に逃げてしまったみたいです。
失敗失敗。でもまだそんなに時間はたっていないはずなので追いつくはず。
影千代さんを呼んで案内してもらいました。

影千代さんにまた案内してもらってしばらく、私は逃げた人に追い付きました。
氷の道を作って滑ってきたので速かったです。
でも何故か追い付いてみるとそこにはお兄ちゃんもいました。


「あれ、お兄ちゃん。どうしたの?」


「お前のことだから、また取りこぼしてるんじゃないかと思ってな。」


そういって苦笑して肩をすくめるお兄ちゃん。
そんな仕草も格好いい。街灯の下に光で照らされて佇むお兄ちゃん。
なんかハードボイルドって感じがする。
その後は、結局お兄ちゃんに最後の締めを取られちゃったけど褒めてもらえました。
えへへへへ。帰りなんか車まで手をつないで、車の中では膝枕までしてもらっちゃいました。
あ~、やっぱりお兄ちゃんっていいにおいだなー・・・
初めての一人での仕事だったからか、予想以上に疲れていた私はそのまま眠ってしまいました。
次はちゃんと最後まで一人でできるよう頑張ります。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回はエロはありません。
次回は他の妹も出てきます。




[25978] 序章 2
Name: 真田蟲◆e0382b41 ID:fc160ac0
Date: 2011/02/13 14:59
今回は少しだけエロっぽいです。
まぁ15禁程度に表現を濁せてると思いますが、いきすぎならすみません。
その時はご指摘ください。
あとオリキャラも出ます。でも基本モブ。



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寝台の隣にある小さな灯だけが広い寝室を薄暗く照らし出す。
その部屋の中央、キングサイズの寝台の上で若い男女が二人、絡み合っていた。


「・・・んっ・・・はぁ・・・お兄様・・・んん・・・」


舌を絡め、
視線を絡め、
腕を絡め、
指を絡め、
足を絡め、
視線を絡め、
お互いの下半身で結合し、粘膜を擦り合わせる。
お互いに体をうねらせ一つに絡み合う姿は、まるで二匹の蛇が絡み合っているようであった。






序章   2






カーテンの隙間から洩れる陽光に気づき、目を覚ました。
仰向けに寝転がる俺の体の上には咲耶が重なり合ってうつ伏せに眠っていた。
ああ、そういえば昨夜は仕事から帰ってきて一緒に寝たんだっけ。
仕事疲れで早々に眠ってしまった可憐を部屋に連れて行ってやった後、俺のもとを訪れた咲耶。
お互い誘うままに、誘われるままに、いつものように何度も肌を重ねた。
行為の後の朝はいつも気だるい。でもこのまま寝ているわけにもいくまい。
一応、学生という身分である俺は、昼間から仕事でもない限り学校に登校しなければならない。


「ほら、咲耶。朝だぞ、起きろ。」


俺は軽くぺしぺしと幸せそうに眠る妹の頬を叩いた。
それに反応して起きる咲耶。


「んん・・・お兄様?おはよう。」


「ああ、おはよう。」


俺に朝の挨拶をする咲耶。しかし一向に上から退く気配がない。


「どうした咲耶?早くしないと学校に遅れるぞ?」


「もう、おはようのキスがまだでしょー?」


そう言って頬をふくらませて抗議する我が妹。
どうやら俺の方からするのを待っていたようだ。やれやれ。


「しょうがないやつだな・・・んむ・・・」


「・・・ん・・・はぁ・・・・」


咲耶の顎を引きよせて唇を重ねる。
すぐに唇を開いてそのまま互いに自然と舌を絡ませる。
俺の口内を咲耶の舌がねっとりと舐めまわし、他の人間よりも尖った犬歯をちろちろと撫でる。
負けじと俺も彼女の前歯の裏をなぞり、口内の天井をこするようにして舌を絡めた。
そのまましばらく、抱き合った姿勢のまま互いの口の中を舐めまわす。


「ぷはぁ・・・」


やがて息が続かなくなったのか咲耶が唇を離した。
舌と舌の先が銀色の糸でつながり、2秒ほど経って重力にしたがって切れ、下にいた俺の口の中に収まる。うん、甘い。


「ふふ、やっぱりお兄様のキスは素敵ね。」


「そりゃ良かった。じゃあ満足したところでそろそろ起きるぞ。」


妹の褒め言葉に素直に喜んでおく。
満足してもらえたみたいなのでそろそろ本気で起きたい。
シャワーでもお互いに浴びなければいろいろと体臭がやばいことになっているはず。
何発出したっけなぁ、自分ではそこまでわからないが絶対生々しい臭いになってるはず。
俺の言葉に従って咲耶が上体をそらし密着状態から離れる。


「・・・んぁ・・・ふふ、お兄様?昨日もいっぱい出したわねぇ。」


一番深く密着していたところが離れると、ごぽり、と音をたてて命の源が流れ落ちた。
咲耶は嬉しそうに自分の下腹部を撫でる。
そのことに関しては俺はちょっと複雑な気分でもあるにはあるのだがノーコメントを貫く。
あっ、別に下腹部撫でてるからってできちゃってるわけではないから。それはまだ安心、なのか?
まぁできたらできたで社会的にはあれかもしれんが、加我智の一族ではよくあることだしな。


「それじゃお兄様、また朝食の席で。」


「ああ、また後でな。」


咲耶は寝台から降りると、バスローブを羽織って部屋を出て行った。
たぶん風呂にでもいくのだろう。俺も後で行こう。



風呂場でシャワーを軽く浴びて体についた生々しい臭いを落とす。主にイカ臭いのとかな。
学園の制服に着替え、一階にあるリビングに向かった。
屋敷の中央にある螺旋階段を降り、玄関ホールから左手に3つめの部屋。
扉を開けると俺以外に現在この屋敷にいる家族は全員勢ぞろいしていた。
長さ10メートルほどのリビングテーブルに既に着席している。


「おはよう、お兄様。」


窓側の席、一番奥には加我智家長女の咲耶。
俺とは異母兄妹にあたる。父と、父の妹にあたる叔母との間に生まれた子だ。
戸籍上はまぁ、俺の両親の子になっているわけだが。
薄く茶色に染めた長い髪を二つに結っている、所謂ツインテールの髪型をしている。
現在高校二年生の16歳で、俺の一つ下だ。
発育は良く、グラビアアイドルのようなプロポーションをしている。
血は争えないのか、自然と肉体関係を結ぶようになった俺は彼女の柔肌には何度も世話になっている。
先ほども挨拶をしたのにも関わらず、今また朝の挨拶をしてきたことからもわかるとおり、
今はまだ周囲には俺たちの夜の営みについては隠してたりする。
でも可憐とか千影あたりは気づいてる節があるから、公にするのも時間の問題かもな。


「おはよう、兄くん。」


その隣、窓側の席の奥から二番目に座るのは次女の千影。
こいつもまた、俺とは異母兄妹にあたる。
と言っても咲耶とはまた事情がことなる異母兄妹だ。
加我智の家は、祀っている白姫という蛇の神霊と一代に一人が交わって子供を成す。
その際に生まれる子供の二人目を加我智に引きとるわけなんだが、つまり、なんだ。
千影は俺の父である加我智源蔵と白姫の蛇姫という女性?との間の子供だ。
紫にも見える黒髪を伸ばし、後頭部でまとめている。
咲耶とは違いスレンダーで、どちらかといえばモデル体型といった感じか。
でも個人的に尻は安産型のいい尻をしていると思う。
現在高校一年生の15歳。しかし高校生とは思えないほどに落ち着いている。
あまり口達者なほうではないが頭ではいろいろと考えているようだ。
咲耶との昨日の晩のことも知っているのか、俺と咲耶を見て含み笑いをしている。


「おはようございます、お兄ちゃん。」


壁側の席、一番奥に座っているのは三女の可憐。
こいつは唯一俺と同じ両親を持つ、ある意味貴重な妹だ。
昨夜の仕事の疲れはもう残っていないのか、明るい表情であいさつしてくれる。
現在中学三年生の14歳。年の割に甘えん坊というか子供っぽさが抜けきらない。
俺が甘やかしたせいなのかもしれないが・・・
黒髪を伸ばし、一部を三つ編みにしている。体型は・・・将来に期待しとこうか。
性格はおとなしいほうだと思うのだが、なんというか純粋な子供がそのまま育った感じがする。
子供特有の優しさや温かさと、無邪気な残虐性とを併せ持つところがある。
ちょっと兄としては将来が心配な面もある。


「くしし、おにいたま、おはよう。」


壁側の席、奥から二番目に座っているのは加我智家四女の雛子。
現在小学二年生の7歳。
こいつに関しては血の繋がりは一切ない。加我智家に養子縁組で兄妹となった。
以前に仕事でとある閑散とした田舎の村の一つが皆殺しにされる事件があったのだが、その時の唯一の生き残りだ。
偶然仕事中に俺が発見し、救助。身寄りもないということでなんとなく拾ってきたら次の日には妹になっていた。
くししと妙に特徴的な笑い方をする。どうも咲耶にあこがれているらしく、俺をおにいたまと呼ぶ。
ただ、事件の後遺症か何なのか。「さ」を上手く発音できずに「た」になるのだ。
本人としては俺のことをお兄様と呼んでいるつもりらしい。


「おはようございます、辰巳様。」


部屋の入り口付近に直立しているのが使用人のまとめ役でもある爺だ。
本名は知らない。俺の幼少のころの記憶から全く容姿が変わっておらず、見た目60代のお爺さん。
いつも名前を聞いても「爺は爺ですよ、辰巳様。」と笑顔で返される。
この家の仕事の全てを理解しており、使用人たちの長の役をしている。
また、俺たちが仕事のある時は送り迎えなどもしてくれる人だ。
爺の隣には4人の使用人が控えている。
俺はみんなの顔を一度見回してから挨拶をした。


「おはよう、みんな。」


今は、加我智家頭首である父の源蔵は仕事でヨーロッパに行っているため不在だ。
母は5年前に亡くなっているし、祖父母の代で生きている人間は加我智にはいない。
必然的に今この本邸にいる人間で序列が上になる俺が、部屋の最奥になる上座に座る。
改めてみんなの顔を見る。この場にいるだけで俺の妹という人物が4人もいる。
これでも多いかもしれないが、本来俺と妹という関係にある者はまだまだいるのだ。
ここに集まっているのは姓が加我智である本家の人間だけ。
他の妹達は分家にあたるので今ここにはいない。
まぁ、その娘たちについてはおいおい説明するが俺が知っているだけで後五人いる。
父である源蔵が、自分と同じ代の一族の女に手当たり次第に手を出したわけだ。
俺が知らないだけでもしかしたらまだいるかもしれない。
いや、あの性欲旺盛な父のことだ。一族以外にも仕事先なんかであった女に手を出していることは確実だろう。
あの人の血を受け継いでいる俺は、すでに咲耶に手を出している時点で非難できないけど。
しっかり俺も加我智の血を受け継いでいるわけだ。
すっかり性の快楽を覚えてしまったからか、最近じゃ咲耶以外の一族を見ても女として見てしまう。
妹達を見て情欲が掻き立てられる時もあるし、たまにクラスメートの一般人を見ても犯したい情動に駆られる。
今までは気になっても一族だけだったのになぁ、日に日に性欲が高くなっていく。
俺もいつかあの父親みたいになってしまうのか。ああ、面倒くさいな。


「お兄様、早く食べないとせっかくの料理が冷めてしまうわよ?」


咲耶の声に思考の渦から意識が戻る。
目の前には湯気を立てる料理が盛られた皿。
それを前に妹達は俺が食事の挨拶をするのを待ってくれている。


「ああ、悪いなみんな。それじゃ、いただきます。」


「いただきまーす。」


「・・・」


「いただきます。」


「ふふ、いただきます。」


手をあわせて食事の挨拶をする。
それに続きみんなの食事が開始される。


「そうだ、爺。父さんがいつ帰ってくるか聞いているか?」


「源蔵様でしたら、現在フランスにいらっしゃいます。
 あと一週間ほどでお帰りになられるようです。」


「そうか、ありがとう。」


「ええ、なんでも皆様にお土産もあるとか。期待して待っているようにとのことです。」


「ええっ、お土産!?やったー!」


爺の言葉を聞いて無邪気に喜ぶ雛子。
しかし俺を含む他の人間はお土産と聞いて顔をしかめた。
それはあの人がお土産と称して持ち帰ったものが碌なものであった試しがないからだ。
10年前、アフリカから帰ってきた父が持ち帰ってきたお土産の怪しげな木彫り象。
中には現地で恐れられていたという邪神の分霊が封じ込められていて、封印が解かれ大暴れ。
その時には屋敷が半壊してしまった。今のこの本邸がまだ新しいのにはそういうわけがある。
8年前、中国から帰ってきた父が持ち帰ったお土産の古びた人形。
俺が触れると急に動きだし、足もとにあった車輪が回転したかと思うと急浮上。
これまた暴走してすごい速さで飛びまわると、空高く飛んで行った。
その日、日本上空を飛んでいたロシアの人工衛星が吹き飛んだ事件が発生したが無関係と思いたい。
5年前、イギリスから帰ってきた父が持ち帰ってきたお土産の怪しげな本。
俺には一切読めなかったが千影が気に入ったために千影にあげた。たしか、何かの写本らしい。
しかしそれを狙ってイギリスからやってきたなんたらとかいう秘密結社の魔術師たちが来襲。
西洋魔術は日本にある術式とは勝手が違うため結構手こずった。
4年前、アマゾンから帰ってきた父が持ち帰ってきた謎の卵。
孵化するまえから嫌な予感は尽きなかったが、生まれてみれば魔獣の卵だった。
丁度仕事で家に来ていた、同じ御霊三家である秋月院の人間が襲われ重傷。
おかげでそいつとは関係が今も悪い状態だ。
3年前、ドイツから帰ってきた父がお土産と称し持ち帰った、というか連れてきた子供。
正体は子供ながらに凶暴な狼の獣人で、使用人が二人噛殺された。
内閣特殊対策室の岩波さんに預けて、今はどうなっているかわからない。処分されてるかも。
ぱっと思い付くだけでも、父が帰る前からお土産があると言って碌なことになるためしがない。


「・・・爺、お土産とやらの内容は聞いているか?」


「申し訳ありません。爺もないようについては存じあげておりません。
 ・・・しかし、今回はまともなものだとよろしいですなぁ。」


そう言う爺の顔はどこか達観しているようであった。




食事を終え学園に向かい、それぞれの学年のクラスに分かれる。
俺たちが通う私立蛇伊陀羅学園は加我智の家から車で20分のところにある。
初等部、中等部、高等部がある学園で、学生の半分近くは寮生である。
敷地面積は広いのだが、その割にひと学年3クラスしかないため非常に生徒数は少ない。
俺の在籍する3-Bは高等部の校舎の三階にある。
俺が持つ身体能力であればわざわざ階段を昇らずとも、跳躍して窓から入った方が早いのだが、
そんなことをすれば目立つことこの上ない。だから面倒くさくともちゃんと階段を使う。
俺の席は窓際でもなければ一番前でも一番後ろでもない、何の面白みも特徴もない席だ。
4月に入り、進級してクラス替えがあったが、ほとんどの奴は初等部からあがってきた面子だ。
周りは顔見知りばかりで、特に新しい交友関係を作ろうとも思わない。
まぁ、一般人と積極的に親しくしようとは思っていないせいもあるが、俺は早々に机につっぷした。
この学園を卒業するまであと一年。
大学に進学するわけでもなく、加我智の家を継いで今もしている裏の仕事を続けるだけの将来だ。
勉学にはあまり意味を見いだせないし、周囲の人間にもそれほど興味もない。
必然的に俺は学校生活全てに興味がなかった。
ただ、家を継ぐ以上高等部は出ていないといけないだけのこと。
卒業する分に出席日数と成績があればそれでいいのだ。
今夜も仕事で夜が遅くなる。だから俺は昼休みまで自分の席で眠ることにした。


「加我智君、起きなさい。」


頭を教科書で軽くはたかれ目を覚ます。
頭をあげれば、そこには化学の朽苗美鈴が目の前に立っていた。
その姿を見て、今が四時限目の時間だと知る。
こいつはこの学校で唯一、俺が授業中寝ていると起こしに来る教師だ。
20代前半、眼鏡をかけていてどこか知的な雰囲気のする女性。
肉感的な体つきをしていて、おまけに美人ということもあって学園の男子には人気らしい。
だが俺の趣味じゃないし、どちらかと言えば俺はこいつが気に食わない。
今俺を起こしたのだって別段こいつが教育熱心というわけではない。
その証拠に、授業中に寝ていた俺を注意する言葉とは裏腹にその眼は俺の体を生々しく舐めまわすような視線を送ってくる。
名前からしてわかるとおり、おそらく加我智の分家の人間なのだろう。
朽苗とは加我智の分家の一つだからだ。
本家と分家の人物を集める集会などで見たことはないから、単に姓が残っているだけの遠縁なのだろうが。
それでも加我智の、同じ血を求める習性がうっすらとでも残っているのか。
俺の加我智の血に反応して興味を引きつけられているらしい。
しかし俺はこいつには何も惹かれない。たぶん加我智の血が薄すぎるのと、単に趣味じゃないからだろう。
おそらく俺と接触したくてこんな風に近づいているのだろうが、下心が見え見えで正直引く。


「ちゃんと起きてないと駄目でしょう?」

どこか嬉しそうに口をゆがませる女教師。
上体をおこした俺の耳元に口を寄せ、周りに聞こえないような小さな声で話しかけてくる。


「放課後、化学準備室に来なさい。話があるから。」


言うだけ言うと、離れる。
俺のしかめっ面を寝起きのせいとでも勘違いしたのか満足そうに笑う朽苗美鈴。
誘っているかのような腰つきで男子生徒の目を引きつけながら教壇に戻る。
ちっ、いちいち感に触る女だ。
不機嫌になった俺は、小さくため息をついた。
昼休みまであと30分もない。もう一度眠る気にはなれなかった。
放課後か、今日は仕事があるのに本当面倒くさいやつだ。
男子の話を聞いていると、あの女教師をSEXしたいとかいうやつが多いらしいが全然理解できない。
どうせ犯るならこっちだろうと、隣の席のクラスメートを見る。
制服のブレザーの上からでもわかる胸は豊かで、あの女教師とプロポーションはさして変わらない。
その女子生徒は俺の視線に気づいたのか、頬を染めてうつむいた。
おや、不快にさせたかな?
俺は視線を前に戻すと小さくため息をついた。
ああ、早く卒業してぇ。



[25978] 設定(序章2現在)
Name: 真田蟲◆e0382b41 ID:fc160ac0
Date: 2011/02/13 15:15
御霊三家
 
  日本を裏から霊的に守護してきた家。その中でも最も大きな三つの家を呼ぶ。
  加我智(かがち)、秋月院、山神の三家。


加我智家
  蛇の神霊である白姫の一族との異類婚で生まれた者の一族。
  数十年に一度、家の中から蛇と結婚する人間を一人作る。
  その身に異能の力を宿すものが多い。
  白姫との混血の影響か、ほとんど女性しか生まれない。
  また、異類婚の他に近親婚が多く、同じ血族に惹かれる性質をもつ。
  そのため非常にややこしい家族構成をもった一族。
  第二次性徴を迎えると性欲が高まりやすい傾向にある。
  分家に朽苗、永蟲がある。

私立蛇伊陀羅学園
  初等部、中等部、高等部がある私立の学園。
  加我智は出資者の一つ。
  辰巳、咲耶、可憐、千影、雛子が通っている。


加我智辰巳(かがちたつみ)
  主人公、高校三年生。加我智家次期頭首。 
  身長176センチ、4月11日生まれの18歳。
  父は現頭首の加我智源蔵、母は加我智美紀子(亡)。
  異様に頑丈な体と、常人を凌駕する身体能力を有する。
  性欲が高く、犬歯が牙のように少しとがっており、媚薬効果のある毒をもつ。
  戦闘では主に肉弾接近戦、他に武器として短刀白燈を持つ。

加我智咲耶(かがちさくや)
  身長159センチ、12月20日生まれの16歳。高校二年生。
  主人公とは異母兄妹にあたる。母は加我智梢。
  辰巳とは現在進行形で肉体関係にある。
  炎を操る異能を持つ。
  辰巳の呼び方はお兄様。
  長い髪をツインテールにしている。
  メリハリのあるプロポーションの持ち主。

加我智可憐(かがちかれん)
  身長148センチ、9月23日生まれの14歳。中学三年生。
  主人公とは同じ両親をもつ妹。
  辰巳に妹として甘える一方、最近は異性として見てほしいと思っている。
  辰巳の呼び方はお兄ちゃん。
  普段はおとなしいが、スイッチが入ると攻撃的な性格になる。
  氷を操る異能を持つ。
  胸は、将来に期待。

加我智千影(かがちちかげ)
  身長157センチ、3月6日生まれの15歳。高校一年生。
  辰巳とは異母兄妹にあたる。母は白姫の蛇姫。
  クールでミステリアスな子。口数は少ない。
  影を操る異能を持つ。
  また、式神にカラスの影千代がいる。
  辰巳の呼び方は兄くん。
  スレンダーで安産型。

加我智雛子(かがちひなこ)
  身長132センチ、8月15日生まれの7歳、小学生。
  日本のとある村に住んでいた生き残り。
  村人全員が皆殺しにされる惨劇の中を一人生き残り発見される。
  その後加我智家に養子入りする。
  咲耶にあこがれているふしがある。
  辰巳の呼び方はおにいたま。
  事件の後遺症か、「さ」を上手く発音できず「た」になる。

爺(じい)
  加我智家の使用人筆頭。
  本名、年齢不明の謎の老人。

内閣特殊対策室二課
  日本のオカルト的な問題を対処する裏の部署。
  もともとは陰陽寮から派生したものともいわれている。
  日本で起こる問題を御霊三家などに依頼したりもする。

岩泉(いわいずみ)
  内閣特殊対策室二課の人間。
  主に加我智家との交渉役を任されている。
  辰巳のもとに仕事を持ってくるのもこの人。

朽苗美鈴(くちなわみすず)
  学園の化学の教師。20代前半。
  朽苗の姓が残っているだけの、かなりの遠縁と思われる。
  しかし加我智の血がうっすらと残っているのか、辰巳を狙っている。
   


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