12日午後0時半ごろ、岐阜県郡上市高鷲町大鷲の鷲ケ岳スキー場で、スキーをしていた三重県桑名市大山田の会社員、マツナガ・フィデレ・マサオさん(35)の長女の小学5年生、佐藤ミレナさん(10)が、ゲレンデの人工降雪機に水を補給する給水栓に衝突し、郡上市内の病院に運ばれたが、脳挫傷などで死亡した。
岐阜県警郡上署によると、ミレナさんはブラジル国籍の父と、母(33)、弟(8)の4人で遊びに来ていた。全員スキーは初めてで、滑り始めてから約30分後の事故だった。
同署によると、人工降雪機は幅1.8メートル、奥行き1.2メートル、高さ3.8メートル。給水栓は降雪機より約50センチ下がった場所にあり、直径12センチ、高さ約1.2メートルの円筒状。安全対策として発泡ウレタンのマットが巻かれ、マットを含めた直径は約35センチ。ミレナさんは転んで尻餅をついたままコントロールを失い、正面から給水栓にぶつかったという。
同スキー場によると、人工降雪機と給水栓は初心者向けパノラマコースのゲレンデ中央部に設置されており、付近の斜度は約15度。同コースに沿って敷設されているレインボー第2ペアリフトの下にあり、降雪機には注意を促すために黄色のウレタンマット(厚さ約15センチ)が巻かれていた。給水栓のマットは白色だった。
同スキー場は「給水栓は降雪機の裏側にあり、衝突は想定していなかった」と説明している。【山盛均、石山絵歩】
佐藤ミレナさんが住む三重県桑名市大山田の集合住宅には南米出身の日系人家族も多く住んでおり、友人たちが悲しみに暮れた。
昨年11月に同じ棟に家族で引っ越してきたという中学1年、光岡ステファニーさん(12)は「すごくやさしい子だった。悲しいです」と泣きはらした目で話した。午後に友人からミレナさんの事故を聞かされたといい「引っ越してきたばかりで友達がいなかった時に、ミレナちゃんが私のことを周りの人に紹介してくれて、なじむことができた」という。運動神経がよく、ステファニーさんが鉄棒ができずに練習に行く時によく付き合ってくれたという。
ミレナさんと同じ小学校に通う4年のカンポス・シオマラさん(10)は「一緒にバレンタインのチョコを作ろうって話していたのに」と話すと、涙が止まらなくなった。「ミレナちゃんは絵が上手だった。動物も好きで、知り合いの人が犬の散歩に来ると、みんなと一緒に犬と遊んでいた」と語った。【村社拓信】
毎日新聞 2011年2月12日 20時02分(最終更新 2月12日 20時38分)