北朝鮮に広まる「麻薬」の手(下)
北朝鮮の体制維持のために中心的な役割を果たす国家保衛部の幹部の中にも、麻薬中毒者が多数存在する。国家保衛部7局責任指導員のオ・ヨンチャン氏も、麻薬中毒者で、今も勤務しているとの証言がある。徹夜の取り調べに入る前に麻薬を投与し、酔った勢いで囚人たちから調書を取るというが、保衛部職員たちの間では、これが恒例となっている。特に保衛部は、麻薬取り締まりの権限を悪用し、押収した麻薬を焼却さず、自分たちが使用するか、あるいは市場に売却して莫大(ばくだい)な資金を獲得している。
さらには、麻薬をまるで現金のように使用する人々もいる。高校で生徒たちに最も喜ばれる誕生日プレゼントは麻薬だという。強いては結婚式のご祝儀に麻薬を送る人もいる。理由は、麻薬が現金と同じくらいの価値を持っているためだ。これは、市場で麻薬が大量に取引されていることを物語っている。
北朝鮮内部で流通している麻薬は、すべて北朝鮮で生産されたものだ。1980年代初めに北朝鮮は政権維持に必要な外貨を獲得するため、麻薬を大量に生産し始めたとされている。平壌市詳原郡にある詳原製薬工場(麻薬製造工場)や、羅南製藥工場などは、麻薬の生産基地として有名だ。
しかし、海外での摘発が増えたことから、取り締まりが強化された。特に中国が麻薬の取り締まりに力を入れ始めたことで、海外で売れなくなった麻薬を北朝鮮内部で販売するほかなくなってしまったわけだ。もちろん公式的なルートを通じて販売しているわけではない。国家機関に勤める高官が、自分の懐を満たすため市場にひそかに流しているのだ。
最近では麻薬の流通拡大に勢いが増している。咸興などの科学院で働く科学者たちも、個人的な金稼ぎのためにひそかに麻薬を作り始めた。悪化の一途をたどる北朝鮮経済に苦しむ住民たちが、麻薬に手を染めているというわけだ。最近入国したある高位脱北者は「貨幣改革以降、麻薬中毒者が急増した」と話す。
最近平壌市内の高官の間では、あるうわさが飛び交っている。「金総書記の実妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏も麻薬中毒者で、金総書記自身も麻薬の力で金正恩氏を連れ回っている」というものだ。このうわさが事実かどうかは定かでないが、北朝鮮政権を維持するために生産し始めた麻薬が同国を滅亡へと導いていることは間違いないようだ。
姜哲煥(カン・チョルファン)記者