進化する音なき爆弾、対北ビラ(下)

 朴代表は気象や化学を専攻する大学教授を尋ね、どうすれば効果的にビラを飛ばせるか、アドバイスを求めた。教授たちは風船にヘリウムではなく、水素を注入するよう提案した。アドバイスを受けた→朴代表は、05年から巨大なアドバルーンに水素を注入した風船を飛ばし始めた。このときから、1回に付き5万枚から10万枚のビラを北朝鮮向けに飛ばすことができるようになった。また、紙も普通紙ではなく、水に濡れても破れないフィルム紙を使うようになった。

 06年からは、袋の中に1ドル(約82円)紙幣を入れ、北朝鮮の住民たちが自らビラを拾う現象も見られるようになった。また、07年からは北朝鮮で行われている公開処刑の場面や、ソウルの発展した様子が記録されたCDを入れ、08年からは重さ70グラムの軽量小型ラジオも入れて飛ばした。北朝鮮の住民たちを「誘惑」するため、北朝鮮の貨幣を入れるようになったのもこのころからだ。

 昨年は北朝鮮が韓国の哨戒艦を沈没させ、延坪島を砲撃するなど大きな事件が相次いだが、このころからアドバルーンにGPS(衛星利用測位システム)を利用した追跡機を装着するようになった。この装置は1個400ドル(約3万3000円)から500ドル(約4万2000円)とかなり高価だが、ビラが飛んでいった地域を把握できるなど、かなりの効果があった。

 「音のない爆弾」とも呼ばれるビラを使った心理的効果は、今でも決して小さくない。ビラが南北間の対話を妨害するという主張が出ているのも、効果が大きいことの証しだ。これまで北朝鮮は、韓国政府に対し、ビラ問題で何度も不満をぶちまけている。今月3日には黄海道沙里院で、住民1人と保衛部の幹部2人がビラを見たという理由で、500人以上の住民が見守る前で公開処刑されたとの話もある。崔代表は「北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋によると、最近は平壌にある金正日(キム・ジョンイル)総書記の執務室近くにまでビラが飛び、これを見た金総書記は衝撃を受けたそうだ。また、平壌市内ではビラを回収するために大騒動が起きたという」と語った。ビラは風に乗ればどこまでも飛んでいくため、時には吹き戻されて韓国側に落ちたこともある。朴代表は「07年には北朝鮮に飛ばしたはずのビラが大統領府や漢江周辺に落ち、国家情報院関係者や警察官が事務所にやって来て、激しい抗議を受けたこともある」と述べた。

ソク・ナムジュン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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