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夫婦別姓を求める訴訟の原告の1人
富山市の塚本協子さん(75) |
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「夫婦が同じ姓にしなければ婚姻届が受理されない現在の法律は、婚姻の自由などを保障する憲法に違反している」などとして、今月14日、富山県や東京都などの男女5人が国家賠償を求めて東京地方裁判所に提訴します。
夫婦別姓を認めるよう求めた裁判は日本では初めてです。
この「夫婦別姓」についてですが、民法では婚姻届を出す際に夫か妻のどちらかの姓を選ぶよう定められています。
これに対し、それぞれの姓を名乗ることを希望する人は、婚姻届を出さない「事実婚」か、戸籍上は姓を変えて仕事などでは元の姓を名乗る「通称使用」を選択せざるを得ません。
今回の原告5人も「事実婚」の夫婦と「通称を使用」している女性3人です。
しかし、「通称」は免許などの身分保障にかかわるものには使用できません。
また「事実婚」では相続権がないなど、法律上夫婦と認められない場合があるため、同姓か別姓かを選ぶことができる「選択的夫婦別姓」を認めるよう求めています。
提訴を前に、原告の1人である富山市の女性に話を聞きました
「私塚本協子なのに、なんで戸籍の、相手の名前で私死ななきゃならないのか」
夫婦別姓を求める訴訟の原告の1人、富山市の塚本協子さん(75)です。
戸籍上は、夫の姓である「小島」となっています。
75歳となり、年齢による衰えを感じたとき、「塚本協子の名前で死にたい」と強く思うようになりました。
「政治にどっだけ期待しても、いっつも、出て廃案になるとか、継続審議になるとか、そうでしょ。」「こんな自由で民主主義の国なのに、なんで、個人の意思が通らないのか、ほんとうに難しいもんだなと思いました。」
塚本さんは50年前に結婚、夫は4人兄弟の長男、塚本さんは1人娘で、お互いの家でどちらの姓を名乗るかでもめたため、籍を入れない事実婚という道を選びました。
高校の教師をしていた塚本さん。
近所でも学校でも、塚本の名で呼ばれていました。
しかし、結婚から2年後、長男が誕生した際に結婚届を出し、小島姓となります。
長女が生まれた際に、一度、離婚届を出して塚本姓に戻りますが、次男が生まれたときに再び小島姓となり、それ以来、離婚届は出していません。
「どうせすぐ夫の名前に慣れるから、と自分で暗示かけて」「仕方なしに夫の名前で呼ばれるようになったんですよね。それが辛くて辛くて、本当に辛かったです」
学校で「小島先生」と呼ばれるたびに襲う、喪失感。
当時は通称使用という選択肢も無く、職員室の机の下で泣いたこともあったそうです。
親の介護などをきっかけに50歳で仕事をやめた塚本さんは、さらに名前への違和感を強めていきます。
「医者行くでしょ。そしたらあたしの身分証明は健康保険証なんですよね。」「通称使用では出来ないものがいっぱいあるんですよね。そのたんびに、ちくりちくりと、まんで体から血出るような思いしなきゃならないんですよね」
書きかけの離婚届を常に手元に置き悩み続けた塚本さんは、娘がくれた本がきっかけで、夫婦別姓について深く学ぶようになり、セミナーでの出会いなどを経て、訴訟を起こすことを決意しました。
ずっと自分の中で抱えていた問題に向き合うことで、塚本さんの生活は変わったといいます。
塚本さん「名前がどんなに私を蝕んでいたのか、っていうことがわかったのね。周りも塚本さん元気になったね表情も違ってきたよって。」「自分で自分を裏切ることなしに、生きていって死ねるんだなっていうそんな感謝の気持ちです。自分を裏切らないで生きていけてよかったなって。」
「塚本さんにとって、塚本協子っていう名前はどんな存在?」
「あたしの存在そのものです。」
夫婦別姓をめぐっては世論も賛否が分かれています。
平成18年に内閣府が行った世論調査では、「夫婦が同じ姓を名乗るべき」とした人が35%、「それぞれの姓を名乗れるようにしてもよい」とした人が36.6%、「同じ姓を名乗るべきだが、通称をどこでも使えるようにすべき」とした人が25.1%でした。
法改正をめぐっては、政府は同じ姓にするか別の姓にするかを選べる「選択的夫婦別姓」の導入を検討していますが、法案が出されては廃案となり、いまだに結論が出ていません。
政治での結論が出ない中、初めて司法の判断が求められます。
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