2011年2月10日
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違法な高利貸し付けとの同会の指摘に、業者はその場で男性の債務をゼロにする「和解」を受け入れた。直後の朝日新聞の取材にまくし立てた。「金に困っていたから貸してやっただけ。わしらは生活保護受給者の安全弁みたいなもんや」。一方、借金苦から解放された男性は「くるまれていた布団をはがしてもらった気分」と、息をはいた。
同会が昨夏から釜ケ崎で開く週1回の相談会には、毎回数人が訪れる。「ヤミ金業者に借金がある」。そんな生活保護受給者の相談が目立つ。街で声をかけると、同じ境遇の人が何人もいた。保護費をギャンブルに散じて借金に走る人が多い。月数万円の利払いに追われる男性(79)は「取り返しがつかないことをした」と悔やむ。
野宿者の支援団体「野宿者ネットワーク」の生田武志代表は「日雇い労働者は仕事が生きがいだった人が多い。生活保護を受けた途端、何をしていいかわからずギャンブルにのめり込む。そこを狙われる」と言う。
釜ケ崎のヤミ金業者が押さえる担保といえば、仕事が見つからない労働者が給付金(アブレ手当)を受ける際の「白手帳」(日雇労働被保険者手帳)だった。しかし今ねらわれるのは、受給者のキャッシュカードだ。
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月末の生活保護費の支給日を、釜ケ崎では「給料日」と呼ぶようになった。1月31日朝、目抜き通りはいつもの数倍の人通りでごった返し、コンビニの現金自動出入機(ATM)には十数人の行列ができた。
「この日だけは客が3、4割増しですわ」。朝から店を開けていた居酒屋の70代の店主が言う。常連の大半が保護費の受給者で、月の半ばからツケが増える。「福祉(保護費)が入ったら返しな」。そう言って焼酎を飲ませる。