あわや大惨事の危機に見舞われた。午後0時5分。斎藤はサブ球場でのトレーニングを終えメーン球場に移動。その際、約300人のファンが選手とファンを仕切るロープからはみ出し、ラグビーのモールのようにドッと押し寄せてきたのだ。
まるで満員電車のようなすし詰め状態。斎藤は背中を何度もバンバンとたたかれ、左腕を強引に引っ張られる危険な状況。どさくさ紛れに股間に手を伸ばす悪質なファンもいたという。
球団関係者や報道陣に守られ、事なきを得たが「自分、あんなの初めてです。怖かった。身の危険を感じた? 感じないといったらウソになります」と斎藤。その顔は引きつっていた。
初の日曜日を迎え、今キャンプ最多となる3000人のファンが名護市営球場に来場。この“事件”が起きた場所には、それまで2人だった警備員が急きょ6人に増員され、無事に練習終了となったが…。佑ちゃんに触れようとしたファンが、我先にとばかりにパニックとなり、危険な状況に陥った格好だ。
一瞬ヒヤリ。だが、その後、斎藤はいつもの沈着冷静に戻った。吉井、芝草両投手コーチと3人で行った面談だ。キャンプに訪れた元巨人の江川卓氏(野球評論家)が「北別府(元広島)をお手本に」と評し、他の評論家陣は背格好の近い桑田真澄氏(元巨人)を理想型に挙げていた。それに呼応するように「真っすぐで空振りを取るのは難しい。打たせて取るタイプなので、それを生かせられれば」と自己分析した。
そんな中でもこだわりをみせた。「技巧派にはなりたくない。松坂さんやダルビッシュさんのように、いつかは真っすぐで空振りが取れるような投手になりたい」と目標を掲げた。直球により磨きをかけ、本格派への道を歩むつもりだ。
7日はブルペン入りする予定。「(88球だった)前回ほど球数は投げませんが、低めに集めたい」。希代のスターはファンを呼ぶ。佑ちゃん劇場はまだまだ続きそうだ。(吉村大佑)