【萬物相】球団オーナー
米大富豪のIT企業家、マーク・キューバンは、バスケットボールの名門インディアナ大を卒業した熱烈なバスケットボールファンだ。1980年代にダラスでコンピューター・ソフトウェアを販売していたころ、母校のバスケットボールの実況中継が聞くことができず不満を募らせていたという。そこでキューバンは、インターネットを通じて実況中継を聞くことのできるオーディオネットを開発し、億万長者となった。そして、2000年には低迷していた米プロバスケットボール(NBA)のダラス・マーベリックスを2億8500万ドル(約235億円)で買収した。
キューバンは、大リーグ・ヤンキースのスタインブレナーや、米プロフットボールリーグ(NFL)のダラス・カウボーイズのジョーンズのような剛腕オーナーではない。キューバンは、Tシャツにジーンズといったラフな服装でマーベリックスの全試合を観戦する。かつて判定に抗議し、コートに入って罰金を科されたこともある。こうしたキューバンのバスケットボールに対する愛情と投資が、マーベリックスを勝率7割のチームへと成長させた。現在マーベリックスのチーム価値は、28億ドル(約2310億円)に達する。
世界最大のゲーム会社、任天堂は、1991年に破産の危機に直面した大リーグのシアトル・マリナーズを買収した。シアトル市民は資金力のある任天堂の買収を歓迎し、マリナーズは再生した。日本最大のインターネットショッピングモールを運営する楽天は、プロ野球チームを設立し、1年目に1億円の黒字を計上した。また、在日コリアンの孫正義が率いるソフトバンクも球団を運営している。ソフトバンクは、NCソフトの日本内パートナーだ。
熱烈な野球ファンで知られるNCソフトの金沢辰(キム・テクジン)社長がこのほど、韓国プロ野球9番目の球団のオーナーになるという。韓国野球委員会(KBO)は、NCソフトを新球団設立の優先交渉者に選定した。フランチャイズ地となる昌原市は、100億ウォン(約7億4000万円)をかけて馬山球場を改装する計画を打ち出し、歓迎した。NCソフトは、1軍に合流する2014年までに、3000億ウォン(約223億円)を投じて新球場を建設することを発表した。金沢辰社長は「オフラインゲームでも楽しみを創造したい」と意気込みを示した。
韓国のプロ野球チームは、厳密にはプロとは言い難い。ほとんどの球団が収益を上げることができないからだ。大企業が球団を無理に抱えることもあり、一種の広告塔とみなしていた。そのため、球団の多くは100億ウォン台の赤字を計上することもあった。NCソフトも、ゲーム企業に対する否定的なイメージを払しょくしたいとの考えが少なからずある。しかし、そのような消極的な考えではファンを感動させることはできない。オーナーの野球に対する情熱とベンチャー企業家のアイデアによって、韓国プロ野球に新たな風を送り込んでくれることを期待したい。
呉太鎮(オ・テジン)論説委員