日経首脳陣は、5月からの本格有料稼働に向けて、早い段階で有料登録読者を30万人にしたい考えだ。今年1月には電子版の広告営業を担うデジタル営業局も立ちあげたばかりである。
ただ、素朴な疑問として、電子版がそんなに優れているなら、"リアルタイム"じゃない新聞を読む人は減るのではないだろうか。
日経の若手記者は語る。
「Web刊単独の値段を4000円と高めに設定したのは、紙と併読してもらうのが基本という考えからですが、日経ブランドを過信しているように思います。実際、社内では5月の有料稼働時に紙の部数がどれくらい減るか、神経質になっています。もし紙のほうがいまより3万部減れば、収支的に電子版を創刊した意味がなくなるらしいです」
「好きに書け」と言われても
そんなリスクを冒しても日経が今回、勝負に打って出たのにはワケがある。
日経新聞は単体では'09年12月期決算で3期連続の減収、赤字額は14億円余り。グループ全体では132億円余りの巨額赤字となった。電子版創刊は将来に危機感を覚えた日経の、まさに社運をかけた超目玉事業なのだ。これでコケたら2期連続の赤字100億円超えになる可能性もある。
ただし、経営状態の悪化に悩んでいるのは日経だけではない。ここで、新聞業界の現状を見ておこう。
'09年下半期の調査によると、大手新聞各社の発行部数の落ち込みが目立つ。朝日新聞が1万4000部減の801万部。毎日新聞が9万6000部減の373万部、産経新聞が46万部減の166万部といった具合だ(数字はABC調査)。
また、広告収入は一昨秋以降の急激な景気後退のあおりをもろに受けて、全国紙5紙すべてが減収。'09年3月期決算で朝日は初の営業赤字を計上し、毎日も赤字を記録している。
ちなみに'09年度の新聞広告費の総額は6739億円で、前年比18.6%減。'00年の1兆2474億円と比較すると、10年の間に2分の1にまで落ち込んだ計算になる。
こうした状況下で新聞各社は新たな収益確保を模索。朝日新聞が昨年6月からテレビ朝日、KDDIと共同でauの携帯電話向けニュース配信サービスを月額262円(税込み)で始めるなど、新事業の強化に取り組んでいる。
新聞社のニュースサイトは、ネット広告の収入に依存し、従来は無料のところが大半だった。そこに登場したのが、本格的な課金型にした今回の日経電子版なのである。他の新聞各社が、その成否に自らの社の未来を重ね、固唾を呑んで見守っているのも当然だろう。
だが、紙の新聞と違って、一日24時間、昼夜を問わず更新しなくてはならない電子版では、記者を確保するのもひと苦労。5年後には日経グループの取材記者、編集者1800人の40%にあたる700人余を電子版のスタッフとする予定というが、現在、電子版に携わっているスタッフは約100名。大幅な人員不足をどうやって補填していくのか?
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