【ソウル5日聯合ニュース】韓米の自由貿易協定(FTA)追加交渉妥結は、両国の経済関係発展の足がかりを築いたと評価される。妥結により、2007年6月の協定文署名以降、主に米国側で進展がみられなかった批准手続きを加速化させ、発効を前倒しできるようになったためだ。
だが、利益のバランスがやや崩れ、米議会での批准見通しは明るくなったのに対し、韓国国会での承認はさらに困難になると予想され、先行きは楽観できない状況だ。
手続きが順調に進めば、FTAは2012年ごろに発効する可能性が高い。発効すれば、その経済効果はこれまでに韓国が締結したFTAの中で最大となる。追加交渉の結果で変わり得るものの、2007年に11の国策シンクタンクが出した共同分析によると、韓米FTAは長期的に韓国経済の実質国内総生産(GDP)を6.0%増加させると見込まれた。
貿易収支は輸出増加幅が輸入増加幅を上回り、10年間で年平均4億6000万ドル(約380億円)、対世界貿易収支は20億ドル、黒字幅が拡大すると分析された。
今回の追加交渉が、構造的に韓国がより多く譲らざるを得ない状況だったにもかかわらず、政府が最大限利益のバランスを取り、妥結するという戦略的決断を下した背景も、こうした大枠の経済効果がより大きいと判断したためだ。
すでに発効したチリ、シンガポール、東南アジア諸国連合(ASEAN)などとのFTA、来年7月に暫定発効する欧州連合(EU)とのFTAに続き、韓米FTAまでが効力を持つようになれば、韓国の貿易にFTA締結国が占める割合は35%以上に高まる。韓国貿易額に占める割合は、2008年ベースで米国が9.9%、インドが1.8%、EUが11.5%だった。
また、韓国とFTAを締結した国が世界経済に占める割合は、EU(30.2%)、米国(23.4%)などを含め、60%に高まる。こうしたことから、米国とのFTA発効は、韓国が「FTA強国」としての地位を固める決定的な契機になるものと、専門家らは評価している。
交渉に当たった外交通商部の金宗フン(キム・ジョンフン)通商交渉本部長は5日の会見で、交渉では相互に利益が出るよう最善を尽くしたとし、「一方的な譲歩だとする一部の評価には同意できない」と述べた。
大きな経済効果とこうした政府の得失分析にもかかわらず、今後の批准プロセスは容易ではなさそうだ。
米国は乗用車の関税撤廃を4年後とするなど、念願だった自動車分野で利益を得た一方、韓国は米国産豚肉の関税撤廃時期を2年間先延ばしし、後発医薬品分野で猶予を得たが、利益のバランスが崩れたとの評価が少なくない。
そのため、米国では議会や自動車業界などが大々的に歓迎の意を示しているのに対し、韓国では妥結前から出ていた「屈辱交渉」という野党側の反発が膨らんでいる。国内世論の悪化は、これまで米国が背負っていた議会批准の負担が、そのまま韓国に移ってくることを意味する。
今回の交渉はまた、署名を終えた協定文を手直しする前例を作ったことになり、これが今後の他国とのFTA推進における「アキレス腱」になることも懸念される。