2010年12月15日 12時37分 更新:12月15日 14時48分
菅直人首相が諫早湾干拓の開門へとかじを切ったことを受け、長崎、佐賀両県の知事は15日、それぞれ緊急会見を開いた。長崎の中村法道知事が「地元に一切話がない」と憤るのに対し、「これで終止符を」と喜ぶ佐賀の古川康知事。全く逆の反応に、両県の対立激化の恐れも予想させた。
開門調査に反対し、国に上告を強く求めていた中村知事は午前11時20分、県庁知事室前で報道陣に「慎重に判断してほしいと訴えてきたが、理解されなかったことは非常に残念」と不満をあらわにした。
この日は県議会が委員会開会中で、菅首相の「上告断念」は知事室で担当職員から議会の説明を受けている最中に飛び込んできた。
中村知事は沈痛な面持ちで「残念」を繰り返し、「地元に一切前もって話はなく、方向性だけ出されたことは非常に遺憾」と政府を批判。「環境アセスメントを実施している途中に、なぜ今の段階でこういうことになるのか大変疑問に思っている」と納得いかない様子だった。
今後について、中村知事は「(開門手続き、補償など)具体的な問題になってくる可能性がある」とし、「どう対応していくか。非常に大きな影響と被害が想定される。そういった課題は何一つ解決されていない状況であり、農・漁業者らの関係者と協議したい」と話した。
一方、佐賀の古川知事は午前11時から県庁で臨時会見。「長い間の有明海再生を巡る問題に大きな一歩がしるされた。いさかいの歴史に終止符を打つべく決断した菅首相らに敬意と感謝の念を申し上げたい」と述べ、「10年かかってここまで来た。切なる願いと思いに政治が応えてくれた」と喜びを語った。
また「決定はゴールではなく再生に向けての新たなスタートに過ぎない」と強調。「これからが試されるステージだ」と語り、干拓地での営農に被害が出ることなく、諫早の防災にも配慮し「新たな被害が生じない形」での開門に向けた準備を取るべきだとの考えを示した。
古川知事は「上告断念の流れができつつある感触はあったが、今日の夜ごろになるのではと思っていた」と驚く一方、「本当に決められたと聞いて正直ホッとした」と胸をなで下ろした。