2010年12月14日 21時29分 更新:12月14日 23時41分
法人税の実効税率5%引き下げで決着したことを受け、菅直人首相が14日、日本経団連の米倉弘昌会長ら経済界代表に国内投資や雇用の拡大などに努力するよう求めたのは、法人税減税をデフレ脱却や経済の活性化につなげる重要な施策の一つと考えているためだ。米倉会長らは菅首相の要請に対して努力する意向を示した。しかし経済界では、円高などの経済環境の不透明感がぬぐえない中で菅首相から「約束」を求められたことに戸惑いや警戒感も広がっている。
日本の法人税実効税率が40.69%と諸外国に比べて高く、企業の国際競争力を低下させ、投資の海外流出などを招くとの危機感が政府・与党内には根強い。経済産業省は、税率の5%引き下げにより、3年後に国内総生産(GDP)を14兆4000億円押し上げる効果があると試算するなど、税率引き下げが日本経済の活性化に貢献すると説明している。
経済界も税率引き下げは歓迎している。菅首相との会談後、米倉会長は記者団に「リーダーシップを発揮していただき敬意を表したい。投資、雇用に最大限の努力をしたい」。米倉会長と同席した日本商工会議所の岡村正会頭も「中小企業を含めこれから頑張る。非常に高い評価をしている」と語った。
しかし、菅首相から「(投資や雇用に)一歩踏み込むよう約束していただきたい」と強い要請を受けたことについては、一転して歯切れが悪い。円高、長引くデフレの影響で、直ちに減税分を投資や雇用に回せるかどうかは不透明なためだ。
米倉会長は「経営者の責任は事業を大きく強くしていくこと」と述べ、雇用拡大や給与引き上げは、事業拡大の努力の結果得られるものだとの立場を強調した。
また5%引き下げが実現しても、世界的にみれば企業の税負担は依然として高い水準が続く。経済同友会の桜井正光代表幹事は14日の定例会見で、「5%は国内に投資を促す意思表示という意味では有効だが、国際的に見ると高い水準で国際競争力を持った税率が望ましい」と語り、一段の税率引き下げを求めた。【立山清也、宮崎泰宏】