2010年12月14日 21時19分 更新:12月14日 22時52分
政府税制調査会は14日、中小企業向けの法人税について現行の18%(国税)から15%に引き下げる方針を決めた。政府内で調整が難航していた証券優遇税制についても、11年末の期限を2年間延長することで決着した。これにより、11年度税制改正大綱の骨格がまとまり、政府は16日に閣議決定する。
大企業の法人税については、菅直人首相が13日に国と地方合わせた実効税率を現行40.69%から5%の引き下げを判断。これに伴い中小企業も減税することを決めた。中小は現在、軽減税率が適用され18%(本則は22%)だが、今回の改正で本則を19%に引き下げたうえ、4%の軽減措置を維持する。
税調はこのほか、菅首相が成長戦略の柱として導入を指示した雇用促進税制について、一定の雇用を増やすことを条件に、新規雇用者1人当たり20万円を税額から控除することを決めた。環境関連投資促進(グリーン)税制については、二酸化炭素(CO2)削減効果が見込まれる設備を取得した企業について、税制上の優遇措置を取る。
また、税調は、法人税の5%引き下げに伴う1.5兆円規模の減収額を補う財源として、企業関連の増税策で6500億円の代替財源を確保することを決定。中小企業を除き、赤字を翌年以降に繰り越して利益から控除できる「欠損金の繰り越し控除制度」の縮小措置も盛り込んだ。
証券優遇税制は11年末の期限をめぐり、延長を要望する金融庁に対し、財務省は打ち切りを主張し、対立が続いていた。14日、野田佳彦財務相と自見庄三郎金融担当相が複数回協議。自見金融相が「株式投資に水を差してはいけない」と押し切り、金融庁が主張する2年延長で決着がついた。
このほか、地球温暖化対策税(環境税)で石油石炭税を現行の1.5倍に増税することを決めており、税収の使い道について最終調整を進めている。
11年度税制改正は、高所得者を中心に給与所得などの控除制度見直しによる個人の増税が相次いでいるのが特徴。一方、企業に対しては中小企業を含む法人税減税や雇用促進税制など、経済成長を後押しするための企業への優遇措置が目立っている。【久田宏、中井正裕】