2010年12月14日 11時58分 更新:12月14日 12時12分
【ワシントン小松健一】米バージニア州の連邦地裁は13日、3月に成立した医療保険改革法について、国民に医療保険加入を義務づけ、未加入者に罰金を科す条項を立法権の逸脱と指摘し、この条項が憲法に違反するとの判決を下した。医療保険改革法を違憲として20以上の州が提訴しているが、違憲判決が出たのは初めて。保険加入の義務化は、国民皆保険実現を目指す「オバマ改革」の根幹を成しており、違憲判決は改革法の撤廃や大幅修正を求める共和党を勢いづかせることになりそうだ。
同様の訴訟では、ミシガン州など2カ所の連邦地裁が既に合憲判決を出している。オバマ政権は今回の違憲判決を控訴する方針で、司法省報道官は「最終的に合憲の判断が出そろうと確信している」と語った。
保険加入義務化は14年に始まる。連邦地裁のハドソン判事は、義務化条項を除く改革法そのものには違憲判断を示さず、改革法に基づき段階的に実施されている諸制度には直接影響しない。
今回、違憲判断の根拠となったのは、米国独特の医療保険制度の考え方だ。医療保険は民間保険会社が売る商品であって、日本や欧州のような社会保障制度とはほど遠い。オバマ政権の改革法も保険加入者に補助金を支出し、保険会社への規制を強めることで保険を購入しやすくしようとしている。
ハドソン判事は商品としての側面を重視し、「民間会社から保険を購入するかしないかの個人の決定」を立法措置で縛ることは「憲法上の限界を超える」と判断した。
この論拠は、11月の中間選挙で共和党が主張していたもので、下院のカンター次期共和党院内総務は違憲判決を受けて「違憲の改革法に対して、あらゆる行動を起こさねばならない」と強調した。共和党が多数派となる下院で、医療保険改革法の存廃や進め方を巡りオバマ政権と共和党の攻防が激しくなることが予想される。