政治【主張】年金改革の考え方 自助自立に立ち返ろう 全ての世代で支え合う制度に2011.2.12 02:48

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【主張】
年金改革の考え方 自助自立に立ち返ろう 全ての世代で支え合う制度に

2011.2.12 02:48

 国民の信頼が揺らいでいる年金制度をいかに立て直すか。本紙がまとめた改革に対する考え方の最大の特徴は、社会の基本は「自助自立」だとの認識に立ち返り、「自己責任」という年金本来の大原則を重視したことである。

 制度の支え手が減っていくのに、年金の最低水準を一律に上げようというのは、もともと無理な話だ。少子高齢化が進む社会においては、国家に多くを求めることはできない。

 社会弱者への支援はもちろん大切だが、国民一人一人が自身で老後の備えに努めねばならない。言い換えれば、少子高齢化に耐えうる年金制度の構築である。

 ◆自己責任の原則を重視

 公的年金は、老後の所得保障の主柱ではあるが、生活のすべてを保障するものではない。保険料納付が少なければ、年金額が少なくなるのは当然だ。

 低年金者が必ずしも低所得者とはいえない。年金額は少なくても、家賃や株の運用益など年金以外の収入がある人もいよう。老後の蓄えが十二分にあるケースだってある。こうした人たちの年金まで増やすのでは、財源を負担する若い世代の納得は得られまい。一律に年金額を上げるのではなく、本当に救済すべき人を絞り込むことが肝要だ。

 そのためにまず、高齢者同士が助け合う仕組みを提言したい。具体的には「自立応援年金制度」(仮称)の新設だ。年金以外の収入を含めても所得が著しく少ない人を対象に、月額2万円程度を支給する。コツコツと年金保険料を納めてきたにもかかわらず、心ならずも老後の生活が苦しくなった人を応援する制度である。

 基礎年金の満額受給者なら、自立応援年金と合わせて生活保護水準を必ず上回るよう、制度を設計する。生活保護をあてにして保険料を納めてこなかったような人が、払ってきた人より優遇されることがあってはならない。不正受給を防ぐため、事前の所得審査を義務付ける。

 財源は、基本的に年金額が多い豊かな高齢者の基礎年金の税負担分を減額して捻出する。それでも足りない分は、消費税増税などの新財源を充てる。これなら制度導入で必要となる追加の税投入額は、現状をベースに計算すれば数千億円規模で収まる。「全ての世代で支え合う年金制度」の象徴ともなろう。

 二つめの提言は年金給付水準の抑制だ。現役世代への負担のツケ回しは回避しなければならない。現行制度には、現役世代の減少に対応する「マクロ経済スライド」という年金額自動調整機能があるがデフレ経済下では機能しない。柔軟に対応する仕組みに改めるべきだ。年金支給開始年齢をさらに引き上げることも必要だろう。

 ◆社会保険方式は維持を

 社会保障費は、自然増分だけで毎年1兆円以上増える。現行水準を維持するだけでも、支える側は負担に耐えきれまい。消費税増税による新たな財源確保にも限界はある。民主党などは、一定額以上の給付を約束する「最低保障年金」という考え方を掲げている。基礎年金の支給水準を上げるべきだとの提言も多いが、受給者全体の底上げを図る余裕はないはずだ。年金だけに巨費を投じるわけにはいかない。

 問われているのは年金財政の安定化だ。持続可能な制度とするためには、保険料と税金を財源とする現行の「社会保険方式」を維持すべきだ。

 社会保障制度全体を見渡した場合、年金より利用者が急増する医療や介護を優先する必要がある。終身雇用が崩れ、非正規労働や生活保護受給者も増えている。若年層向け制度の整備も急がれる。消費税の大幅引き上げが必要な「全額税方式」では、こうした分野に回す財源の確保が難しくなる。

 無年金者を減らすための受給資格期間の短縮やパート社員の厚生年金への加入要件緩和も求めたい。いずれも政治決断が急がれる。年金一元化は、厚生、共済両年金のみとするのが現実的だ。

 年金の課題は消費税増税だけで解消するわけではない。安定した保険料収入を得るためには、一刻も早くデフレ脱却を果たし、持続的成長軌道に乗せることが必要だ。出生数減に歯止めをかけられなければ本当の解決とはならない。総合的かつ実効性ある取り組みが今こそ求められている。

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