職業訓練中の失業者に生活費を支給する雇用対策を、政府は「求職者支援制度」として恒久化する。そのための法案を近く国会に提出する。
情報や介護、医療分野などで人材需要が増え、産業構造は転換期にある。成長分野へ人材を移すため、失業者が必要な技能を身につけることへの支援は大いに意義がある。
だが新制度が、その目的に沿った中身になっているかは疑問だ。
新制度では9月で終わる緊急人材育成支援事業と同様に、受講者が職業訓練の期間中に月10万円もらえる。訓練は民間事業者がパソコン操作や介護などの講座を開き、専門学校などの事業者も受講した人数や期間に応じて奨励金を受け取る。
現在でも生活費をもらうだけで訓練に熱心でない受講者がいたり、助成金めあてで真剣に教えない訓練校があったりする。利用者が就職をめざして真剣に学び、訓練が効果のあるものになるような工夫が要る。
雇用情勢が好転する保証はなく、求職者支援は重要なだけに、新制度の内容の再検討を求めたい。
再就職に役立つ訓練が十分そろうかがまず問題だ。現在は職場のマナーを教えるだけで就職に直接結びつかないような講座も少なくない。事業者に再就職させた実績などを競わせることで、効果の上がらない講座は淘汰される仕組みが必要だ。
受講者の出席状況や、民間事業者がきちんと訓練を運営しているかを入念に点検する体制も欠かせない。
職業紹介はハローワークが受け持つことになっているが、民間にゆだねるべきだ。本人が習得した能力は訓練を受け持った民間事業者が把握しているので、職業紹介も民間に担わせれば就職に結びつきやすい。現行制度で再就職した人の割合は3人に2人だが、民間活用で高まろう。
政府案だと財源は雇用保険料と一般財源を充て、3年後をめどに全額を一般財源に切り替える。制度の利用者は雇用保険に加入していない人や失業手当の受給期間が切れた人が大部分になる。このため財源は労使が負担する雇用保険料を充てず、基本は全額、一般財源としている。
その考え方に一理はあるが、一般財源のゆとりは極めて少ない。例えば1週間の所定労働時間が10時間程度のパートも入れるようにするなどして保険収入を増やせば、制度の対象者を広げられるのではないか。
職業人の育成は学校教育の問題でもある。小中学校のころから、将来の仕事を意識させる教育を充実すべきだ。個人の適性を生かす「複線型」教育制度への転換も欠かせない。
職業訓練、求職者、受講者、専門学校、介護、生活費、バラマキ、人材育成、ハローワーク、産業構造、医療分野
日経平均(円) | 10,605.65 | -12.18 | 10日 大引 |
---|---|---|---|
NYダウ(ドル) | 12,273.26 | +43.97 | 11日 16:30 |
英FTSE100 | 6,062.90 | +42.89 | 11日 16:35 |
ドル/円 | 83.44 - .46 | +0.83円安 | 12日 5:48 |
ユーロ/円 | 113.07 - .10 | +0.05円安 | 12日 5:48 |
長期金利(%) | 1.295 | -0.035 | 10日 17:36 |
NY原油(ドル) | 85.58 | -1.15 | 11日 終値 |
経済や企業の最新ニュースのほか、大リーグやサッカーなどのスポーツニュースも満載
詳細ページへ
日経ニュースメール(無料)など、電子版ではさまざまなメールサービスを用意しています。
(詳細はこちら)