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第三話 辛い犠牲
ネルフの司令室では、加持とゲンドウが顔を合わせてゼーレの動きについて話し合っている。

「いやはや、使徒が出現するなり弐号機と新しいチルドレンの配属とは早いですね」
「老人たちは我々に時計の針を進めさせようとしている」
「強すぎるサードチルドレンへの目付役としても考えられませんか」
「ネルフに鈴を付けるつもりか。フッ、鈴が何個もあるとうるさいものだ」

ゲンドウは加持を見つめながらそんな事をつぶやいた。

「これは異な事を、私はあなたの協力者ですよ」
「では、その証拠を見せてもらおうか」

ゲンドウの言葉に加持はうなずき、膝の下に置いていたトランクを開いて机の上に乗せる。

「あなたの待ち望んでいたものです。硬化ベークライトで固めてありますが、生きています」
「これが第1使徒、アダムか」

そうつぶやいたゲンドウはアダムに手を伸ばそうとした。
その時、加持がゲンドウの頭を向かって銃を構える。

「本当にゼーレの人類補完計画を阻止して頂けるんですか?」
「……もちろんだ」

ゲンドウの返事を聞いた加持は銃をゆっくりと下ろした。
そして、大きく息を吐き出した加持はからかうような笑みを浮かべてゲンドウに問い掛ける。

「しかし、あなたの推測通り息子さんが本部に来る前にゼーレと接触していたとしたら、彼が障害になるかもしれませんよ」
「この使徒の力を手に入れた今、シンジなど問題無い」

ゲンドウはそう言って胎児化したアダムをつまみ上げ、自分の口へと運んで飲み込んだ。
その頃、ネルフの作戦会議室ではシンジとカヲルは起動実験のケガが完治したレイと対面した。
ミサトの前で、3人は握手を交わす。

「渚カヲル、よろしくお願いするよ」
「僕の名前は碇シンジ。君の名前は?」
「綾波レイ……」

無表情で答えたレイの取りなすかのようにミサトはシンジ達に言い訳をする。

「レイはこういう子だから、冷たい印象を受けてしまうけど、パイロット同士仲良くしてあげてね」
「はい」

シンジはミサトの言葉にうなずき、レイに笑顔を向けた。
そのシンジの笑顔を見たレイは戸惑ったように答える。

「ごめんなさい。こういう事は初めてだから、どうしたらいいかわからないの」
「……笑えばいいと思うよ」

するとシンジの笑顔に釣られたのか、レイもぎこちない動きで可愛い笑顔を見せた。
こんなレイの爽やかな笑顔を見た事の無いミサトはあごを外してしまいそうになるぐらい驚いた。
シンジはレイに好印象を与えられたのだと確信すると、幸福感が胸の中いっぱいに広まるのを感じた。
しかし、そんなシンジの幸せな時間を邪魔するかのように使徒の警報が鳴り響いた。
襲来して来た使徒ゼルエルは今まで現れた2体の使徒達よりはるかに破壊力が大きかった。
空中を漂う使徒ゼルエルの両目が発光すると、十字架の形をした巨大なATフィールドの柱が巻き起こる。
足止めのために威嚇射撃を行っていた戦略自衛隊の部隊は数秒も持たずに全滅した。

「使徒の攻撃は第18装甲板まで貫通しました!」

発令所の日向はその被害の大きさに圧倒されていた。

「どうする、葛城一尉」

ゲンドウに尋ねられたミサトは凛とした表情で答える。

「エヴァの地上迎撃は間に合いません、エヴァ3機をジオフロント内に配置します!」

ミサトの指示により、エヴァ3機はジオフロントの内部へと射出された。
使徒がさらに攻撃を加え、ジオフロントが振動する。
そして、ジオフロントの天蓋部分に巨大な穴が空き、使徒がその穴を通って降下して来た。
その使徒の降下地点の間近に零号機は立っている。
降下してきた使徒に気がついた零号機は持っていたパレット・ガンで攻撃しようと構えた。
しかし、使徒は両腕を紙のようにしならせ、零号機の両腕を素早く斬り落とした。

「綾波っ!!」

駆けつけようとしたシンジの目の前で両腕を失った零号機は地面に倒れ伏した。
ショックを受けて固まっている初号機に向かって使徒が光線を放つ。

「シンジ君!」

カヲルの声を聞いて気がついたシンジはATフィールドを張り光線を跳ね返す。

「綾波はせっかくケガが治ったばかりなんだぞ!」

怒声を放ったシンジは兵装ビルから銃器類を次々と取り出して乱射する。
しかし、使徒の体の表面は傷ついても、効果的なダメージは与えられていない様子だった。

「ATフィールドは貫通しているはずなのに、どうして倒せないんだよ!」

焦って攻撃を加え続けるシンジに弐号機のカヲルから通信が入る。

「その使徒は外側からコアを傷つける事は出来ないのさ」
「そんな、じゃあどうすればいいんだよ!」
「僕が使徒のコアと接触して自爆する。そうすれば使徒を倒せるはずさ」
「それじゃあ、カヲル君が!」
「僕にとって生と死は等価値なんだ。それに好意を持った君のために死ねるんだ、こんなに嬉しい事は無いよ」

そのカヲルの言葉を最後に、弐号機からの通信は途絶えた。

「大変です、弐号機のエントリープラグが空いています!」

マヤの報告と鳴り響く警報の音、パニックになる発令所の様子がシンジの耳に入って来る。
そして、カヲルが弐号機から飛び出し、光の筋を作りながら使徒に向かって一直線に飛んで行くのが分かった。

「カヲル君、戻ってよ、カヲル君!」

エントリープラグの中で必死に呼びかけるシンジの目の前で、カヲルは使徒と空中戦を繰り広げている。
剃刀のように鋭い腕で、使徒はカヲルを切り刻もうとした。
しかし、的の小さいカヲルに命中させる事は出来なかった。
そしてカヲルと使徒の距離は縮まって行き、ついにカヲルの体は使徒のコアに飲み込まれた。

「共に逝こう、我が兄弟」

カヲルがそうつぶやくと、カヲルを中心として白い閃光が広がって行く。
その光は使徒のコアを覆い尽くし、コアを破壊された使徒の体は大爆発を起こした。

「僕はまた、カヲル君を殺してしまった……! ちくしょおおおおお!」

初号機のエントリープラグの中でシンジは咆哮した。
無敵の力を持ってしてもカヲルを救う事が出来なかった悔恨で、シンジの頭の中はいっぱいだった。
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