【レポート】
クリエイターの祭典「eAT'11 KANAZAWA」密着レポート-中編
4 セミナーC、メイド・イン・ジャパンのものづくり
2011/02/11
金沢の地元ゲストとしては今回唯一となった陶芸家の大樋年雄氏、そしてeAT'11名人賞を受賞した鄭秀和氏、コーディネーター役のイート金沢実行委員長・中島信也氏による「メイド・イン・ジャパンのものづくり」がeAT'11最後のセミナーである。
三者の共通した思いは、今の日本に対して。不景気の時代を、真面目な人は真面目に受け止め、自分に厳しくやってきたことで、どこか元気をなくしてしまっているのではないか。一方で、海外からの産物に目を輝かせるところが日本にはあるが、日本にもこんな考えを持って生きている人がいることを知って、元気になってもらいたい。そんな中島氏の出だしでセミナーはスタートした。
それを受けて会場の空気が一瞬にしてまじめなものに変わった。 で、始まったのが中島氏の自己紹介だ。
真っ白なキャンバスに手書き文字の自分史スライド。引越しで幼稚園を3回も変わった伸也君は千里ニュータウンで小学生時代を送る。神童と呼ばれるほど賢かった。が、唯一、足が遅かった。抗いようのないこの事実はやがて伸也少年に暗い影を落とす…モテたい、モテない、モテたい…。絶妙な関西弁トークでテンポよく進んでいく。ほんの1分足らずで会場は爆笑の渦になった。すべては計算づくのツカミで、ゲストも会場も脱帽しきり。
その後、中島氏作詞作曲の「ナウなショップでステキなショッピング」に合わせこれまで関わった代表的なCMシーンが流れていく。悔しいぐらいいちいち記憶に残っているものばかりなのであえて割愛するが、最近関わった作品は、NTTドコモのアンドロイドケータイ「ギャラクシー」。ギャラクシーに扮する渡辺謙のあれといえば、なるほど中島氏のスゴさはご理解いただけるのではなかろうか。
続いては有限会社インテンショナリーズの鄭秀和氏。1996年に「ゼロを1に」を会社のコンセプトとして立ち上げた。いまや鉛筆から超高層建築まで手がけるようになったが、まだまだゴールは遠い先にあるという。
鄭 生活の中ではシームレスなものを、職業でとらえるのではなく、空間で捉えられる仕事をしたいと思ってやってきました。その結果が鉛筆から超高層というだけです。現在、都市の概念が変容しています。よく建築家のゴールは公共建築がデファクトって言われますが、自分としては自分なりの新しい公共性をやりたいと思っています。その1つがamanadaのケータイ
従来の枠組みで分け隔てるのではなく、他業種の人とコラボレーションをしながらアライアンスを図り、プロダクトに要素をいろいろ詰め込んでいく。このスタイルが自分には合っていると語る。
これまで手がけたプロダクツのスライドショーを見せながら、熱くクールに信念を語る鄭氏だが、今につながる考え方に至ったのは、武蔵野美術大学に入学したときに感じた「違和感」だったそうだ。各学部学科間の違いが、彼にとっては要素の1つに見えたということなのだろう。
最後は陶芸家、大樋年雄氏。地元金沢で大樋焼の伝統を継承する一方で、金沢大学、ロチェスター工科大学の客員教授を務める。また陶芸と建築の融合を目指した活動にも積極的で、レストラン、マンションの空間プロデュースも手がけている。これまでの工芸活動が評価され、金沢市文化活動章も受賞している人物だ。
大樋 「日本の歴史は、実はちゃんと伝わっていないことが多いです。伝統文化の歴史も同じ。例えば金沢。金沢はその昔、裏日本と呼ばれていましたが、どうしてそう呼ばれるに至ったのか? また拝見、献上という言葉がありますが、そもそもこの言葉の由来は何なのか。いろいろ紐解いていくと、工芸の街金沢といわれる所以が見えてきます」
RAKUという文字をどこかで見た人も多いと思うが、これは陶芸を指す世界共通語だ。陶芸というものが世界に伝わってきた証ともいえる。金沢の伝統工芸という文化を通じ、継承し、その良さを世界に広める活動をしている大樋氏の一言一言には裏打ちされた説得力がある。続けることの大切さが、陶芸を通じて世界中を回った写真スライド一枚一枚に込められていた。
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