小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件の公判が始まった。
政治資金規正法違反の罪に問われた元秘書の3人は初公判でいずれも起訴内容を否定、無罪を主張した。検察と全面対決の構図だ。
最大の争点は、被告の一人で衆院議員の石川知裕被告が捜査段階で大筋で認めた供述調書の信用性と任意性だ。
小沢元代表に虚偽記入を報告し了承を得たとするこの調書は、小沢元代表の強制起訴の根拠となっている。小沢元代表本人の公判に影響を与える可能性は大きい。
検察側は形式的なミスではなく、ダム建設の受注をめぐって中堅ゼネコンからの「裏献金」があり、その受領を隠すことが虚偽記載の動機だとしている。悪質性が高いことをアピールした。
「裏献金」は東京地検特捜部が強制捜査に踏み切った核心部分であり、今後の公判を注意深く見守りたい。
一方、石川被告側は当初から裏献金の受領を全面否認し、起訴内容とは無関係と反発している。
捜査段階の供述調書については、検事から「自供しなければ別件で立件する可能性がある」などと脅され署名させられたと述べ、信用性がないとしている。
再聴取時の録音記録も証拠申請して「検事による誘導があった」と主張している。
任意で行ったはずの女性秘書に対する事情聴取は、子どもを保育園に迎えに行くことも、電話さえも許さず10時間に及ぶ強引なものだったと訴えている。
このため、検察の捜査手法の妥当性も争点の一つとなるだろう。
大阪地検特捜部の証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件などで表面化したように、特捜部の捜査は、まず罪の構成要件に当てはまるストーリー、見立てを作り、それに沿った調書を強引に作成する。
拘置の長期化によって保釈をちらつかせ、供述を迫ったり、ストーリーに合うよう誘導することが指摘された。そんな強引な手法が冤罪(えんざい)を生むと批判された。
無理な取り調べで、虚偽の自白に追い込んではいないか。適切であったのか。検察は捜査の正当性を立証しなければならない。
「政治とカネ」をめぐる事件の公判では、検察の捜査手法もまた裁かれることに注目したい。
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