現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年2月12日(土)付

印刷

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

南北協議不調―韓国支え、北朝鮮に迫れ

46人の韓国兵が北朝鮮製の魚雷攻撃で犠牲になった昨年3月の哨戒艦沈没事件。11月には北朝鮮が韓国の島を砲撃し、4人の命が奪われた。さらに大規模な交戦になりかねなかった緊[記事全文]

弁護士会―人権擁護に投じたボール

警察に逮捕され、勾留が決まると国の費用で弁護士を頼むことができる。ただし刑の軽い容疑はその対象にならないなど、捜査の行きすぎをチェックできないケースも少なくない。少年の[記事全文]

南北協議不調―韓国支え、北朝鮮に迫れ

 46人の韓国兵が北朝鮮製の魚雷攻撃で犠牲になった昨年3月の哨戒艦沈没事件。11月には北朝鮮が韓国の島を砲撃し、4人の命が奪われた。

 さらに大規模な交戦になりかねなかった緊張をほぐし、対話を進めるのは、生やさしいことではない。

 それを見せつける結果になった。南北朝鮮間の軍高官協議を開くための予備会談が物別れに終わった。

 とはいえ、事態の打開のためには、忍耐強く話し合いを重ねていくしかないのも、また事実である。

 それには何よりも、北朝鮮の真摯(しんし)な取り組みが出発点になる。

 韓国として、謝罪をはじめ「責任ある措置」を北朝鮮に求め、再発防止を迫ったのは当然だ。

 北朝鮮は、沈没事件を北朝鮮の仕業とするのは謀略劇だとし、砲撃の責任も韓国側に転嫁したという。予備会談後、「これ以上(韓国を)相手にする必要を感じない」とも表明した。

 これでは話にならない。

 年明け後、北朝鮮は韓国に対話攻勢をかけてきた。米国と中国が南北対話を求めている。北朝鮮は韓国との関係改善をアピールすることで、米朝や日朝、そして核問題をめぐる6者協議を動かしたい。それによって、食糧やエネルギー、経済面の支援を手に入れ、後継体制を固めたいのだろう。

 だが、対話が思惑通りにいかず、近く米韓の合同軍事演習が行われるからといって、北朝鮮が再び挑発と、ミサイルや核の実験に走ったりすることがあれば、言語道断である。

 南北は冷却期間を置くにしろ、改めて協議の機会を探ってほしい。

 韓国は、つらい立場にある。我々はそこにさらに思いを致したい。

 北朝鮮にやられっ放しだが、報復して戦争を招くわけにはいかない。今のままでは、被害補償はおろか、ろくな謝罪さえ期待はできまい。だが、対話によって緊張を和らげねばならない。北東アジアの安定は韓国の自制に負っているところが少なくない。

 オバマ米大統領肝いりの核保安サミットの第2回会合が来年、韓国で開かれる。核テロ抑止とともに、核拡散をいかに防ぐかが重要な課題だ。

 焦点のひとつが北朝鮮である。北朝鮮は昨秋、ウラン濃縮施設を初めて公開した。平和利用のためだと公言しているが、新たな核兵器開発につながる。国連安保理決議に反した濃縮が国際社会の目が届かぬまま進むのは、とうてい認められるものではない。

 この問題の解決を図り、核保安サミットで成果をあげるためにも、韓国の役割は大きい。日本や米国が協力し支えていくことが大切になる。

 日米韓が結束を固め、中国、ロシアと連携を深めたうえで、各国が北朝鮮への説得を強めることが必要だ。

検索フォーム

弁護士会―人権擁護に投じたボール

 警察に逮捕され、勾留が決まると国の費用で弁護士を頼むことができる。ただし刑の軽い容疑はその対象にならないなど、捜査の行きすぎをチェックできないケースも少なくない。

 少年の場合、話は一層ややこしい。捜査が終わり家裁に事件が送られると、援助の範囲は大人より狭まり、弁護士がつくのは一部に限られる。

 こうしたすき間を埋めようと、日本弁護士連合会は基金を設け、そこから担当弁護士に報酬を支払う活動を続けてきた。ところが資金不足が予測されるため、東京で臨時総会を開いて、3万人弱いるすべての弁護士から集める会費を増やすことを決めた。

 私たちの社会のあり方や国民の人権の擁護、法律家の役割などいろいろ考えさせる「値上げ」といえる。

 あわせて、犯罪被害者や虐待を受けている子ども、精神障害者、外国人らが法的な保護を求める際に弁護士費用を用立てる基金の充実も決めた。お年寄りなどが生活保護の申請をする際の手助けにも充てられるもので、近年、利用件数は急増している。弁護士は特別会費として、双方の基金のために毎月5500円を当面拠出する。

 日弁連は、いずれの事業も公益性が高く、本来は国や公的機関の費用でまかなうべきだと主張する。ぐるり回って多くが弁護士の懐に入るお金かもしれないが、だからといって弁護士会に負担させるのは確かに筋が違う。

 切実な問題に直面しているのに、弁護士を頼めず権利を実現できない。そんな人がいるのなら、同じ社会の構成員である私たちの税金から相応の応援をするべきだろう。

 事業に必要な費用そのものは年20億円ほどだ。だが、生活保護の総予算や捜査・裁判、精神保健行政などに直接間接の影響が及ぶことも考えられる。どういう順番や規模で進めるべきか、議論を深めていきたい。

 こうした仕組みを築き、運用していくには、全国に担い手となる弁護士が存在しなければならない。この国にどれほどの数の弁護士が必要かという論争にも関連してこよう。

 弁護士会は約20年前、逮捕された人からの電話一本で弁護士が警察署に無料で駆けつける当番弁護士制度を始めた。この取り組みが、早い段階から弁護士がかかわることの重要性を社会に気づかせた。裁判員制度もその土台の上に成り立っている。

 借金の整理をめぐって相談にきた人を食い物にする弁護士もいて、日弁連への風当たりはきつい。一方で、こうした地道な実践と提言は、法律専門家に期待される社会的使命である。

 身銭を切って提起してきた問題にどう応えるか。「職域拡大運動ではないか」との冷めた見方もあるが、それで片づけていい話ではあるまい。

検索フォーム

PR情報