「のだめカンタービレ 巴里編」の脚本を担当している榎戸洋司さん

 クラシック音楽に打ち込む若者たちを描いたアニメ「のだめカンタービレ」(二ノ宮知子原作)の新シリーズ「巴里編」が佳境だ。パリに留学した主人公・野田恵と千秋真一の関係にも微妙な変化が訪れている。「巴里編」全話の脚本を担当している榎戸洋司さんに物語のポイントを聞いた。

−−続編から脚本に参加するのは難しかったのでは

榎戸 「僕が書いていいのかな」という思いはありましたが、第1期のアニメも見ていましたし、監督も一緒に変わるということだったので、お受けしました。現作を何度も読んでみて、国内編と巴里編で大きく空気が変わっていたことも大きかったと思います。

−−どう変わりましたか

榎戸 国内編は音大を舞台に音楽をテーマとした若者たちの物語だったのが、巴里編になってのちに大音楽家になる人の若き日々を描く物語になったと思うんです。千秋だけでなくのだめも同じです。僕の中では二人は「やがてすごくなる人」という前提で脚本を書いてます。

−−具体的には?

榎戸 千秋はパリで小さなオーケストラの指揮者になるわけですが、のだめもお城でのリサイタルをきっかけに、自分は演奏家であるということに気がつきます。二人の進むべき道が見えてきたというのがポイントですね。しかも、進む道は違うのに、壁に当たった時はお互いの存在が大事で、二人の関係性がやはり面白いのだと思います。

−−二人とも成長しているということでしょうか

榎戸 のだめの成長は特にストレートだと思いますよ。自分のピアノが「千秋だけのもの」ではなくなっているわけですから。それでも、千秋から離れるわけじゃない。男女関係として理想的ではないでしょうか。ただ恋愛の要素は難しい。二人って、実際どうなの?っていうのは僕も知りたいくらいですが、実は見ている人、ファンの人みんなが気になる部分だと思うんです。

−−全話を担当されての感想は

榎戸 僕は、現作ものはなるべく原作通りにやりたいので、今回も脚本というよりは脚色のつもりで書いてます。11話ということなので時間が足りなかったかなというのが正直なところですが、きりのいいところで終わりますので最後まで見てくださるとうれしいです。

えのきど・ようじ=63年滋賀県生まれ。「美少女戦士セーラームーン」シリーズや「新世紀エヴァンゲリオン」など、アニメの脚本を多数手がける。