きょうの社説 2011年2月12日

◎がん診療の連携 「北陸」の枠組みも視野に
 がん診療の充実をめざし、石川県が国の「がん診療連携拠点病院(拠点病院)」に準じ て、地域の中核的な病院を独自に指定することになった。すでに富山県など全国で同様の取り組みがみられるが、石川のように国指定の拠点病院が金沢市近郊に集中する地域では、独自の制度で指定の空白域を埋めていくことは、県全体の医療水準を高めるうえで大きな意味を持つ。

 富山県では独自の指定とともに、臓器や療法など分野ごとに機能分担したネットワーク も構築されている。「富山型」と呼ばれる、そうした役割の明確化も連携を機能させる有効な手法だろう。

 がん診療の体制整備は、各県の医療推進計画や県内の2次医療圏の状況に合わせて進め られてきたが、北陸の場合、3県の5大学が連携する「北陸がんプロフェッショナル養成プラン」という広域的な枠組みもある。がんの分野においては、北陸全体を一つの圏域とする「北陸医療圏」のまとまりが機能しており、県の診療体制を強化するためには、こうした仕組みも積極的に生かす必要がある。

 「北陸がんプロ」は金大、金沢医科大、石川県立看護大、富大、福井大が協力し、がん 専門医をはじめ、がんに特化した看護師や放射線技師、薬剤師の養成をめざしている。3県すべての国指定の拠点病院が参画しているのが大きな特徴である。県による独自の指定制度は、各県の拠点病院を補完する狙いがあるが、それを北陸全体のネットワークと連動させれば、重層的な医療連携も可能になろう。

 県の仕組みはどうしても「一県完結型」になりやすいが、現場では、たとえば富山県か ら金大附属病院へ患者が訪れるなど県を越えた受診は珍しくない。大学病院の協力病院も隣県に広がっている。

 3県では、がん診療でも、それぞれに得意分野があり、その分野の第一人者がいる。専 門医の養成のみならず、研究やデータ蓄積など相乗効果が期待できるテーマは多い。「がんプロ」は文部科学省、拠点病院制度は厚生労働省の所管だが、患者の側に立てば、行政の縦割りは関係ない。北陸独自の仕組みを構築していきたい。

◎小沢氏の処分 党員資格停止では甘い
 菅直人首相が自発的な離党を求め、小沢一郎元代表がこれを拒否する。10日行われた 両者の会談は、交渉というよりセレモニーに近いものだった。小沢氏処分の落としどころが、報道各社の予想通り「党員資格停止」だとしたら、随分と甘い処分だ。

 民主党は与野党国会対策委員長会談でも、野党が要求していた小沢氏の証人喚問を拒否 した。民主党の安住淳国対委員長は、国会での説明責任があることを認めながらも「反対の党がある」ため、拒否するのだという。証人喚問に反対している国民新党や社民党の背中に隠れ、党としての判断を示さないのは、ずるいやり方だ。

 菅政権は「有言実行」を掲げながら、政治とカネの問題にはっきりと、けじめをつける つもりはないらしい。小沢氏の処分で、自浄能力を示さぬ姿が、民主党政権への失望につながっている現実を重く受け止めてもらいたい。

 小沢氏は会談後の会見で、「私が党を離れるとか、党が何らかの処分をするというよう なことは、健全な政党政治と民主主義の発展にとって妥当ではない」と述べた。自分に対する処分は民主主義に反すると言わんばかりの主張には、あ然とさせられる。冤罪(えんざい)の疑いをかけられた悲劇の人を演じているつもりなのだろうか。

 党首の要請に「一兵卒」が応じないなら、次の段階は「離党勧告」であり、これも拒否 すれば「除名処分」となるのが定石だろう。それが、党員資格の停止となると話は大きく違ってくる。離党勧告よりはるかに軽い処分であり、6カ月程度、党員資格を停止されたとしても国会内で民主党会派の一員として活動できる。

 もし小沢氏に厳しい処分を下せば、党内対立は一層激化し、予算関連法案を衆院で再可 決するために必要な3分の2の確保が危うくなる。菅首相はそう考えて妥協しようとしているのではないか。小沢氏も本音の部分で、党員資格停止なら御の字と思うだろう。菅首相は、小沢氏に直接離党を迫ったことを、野党や国民への言い訳にするつもりかもしれないが、国民の目は節穴ではない。