きょうのコラム「時鐘」 2011年2月12日

 北陸新幹線をめぐって、またぞろ新潟の知事が厄介な注文をつけている。町内そろって雪かきをしているのに、ツムジを曲げている

国交省が気に食わぬ、と強い意志を貫くそうだが、おかしな意地の張り合いに映ってしまう。「意志(いし)」と「意地(いじ)」。濁点を付けると、がらりと意味が変わる。作家に寄稿を頼み、多忙を理由に断られたことがある。体が大事、と前置きして「原稿より健康」

若者におやじギャグと笑われそうだが、濁点をめぐる言葉遊びは昔からある。「世の中は澄むと濁るで大違い。人は茶を飲む、蛇(じゃ)は人をのむ」。大概の本に載る模範回答である

キスは甘いが、傷は痛い。さほど難しい言葉遊びではないが、何事も精進すれば高みに至る。「徳に福あり、フグに毒あり」という傑作の誉れ高いものも生まれている

誇り高き越後の首長は、たあいのない言葉遊びに関心はないだろう。が、庶民の知恵を侮ってはいけない。徳を施すつもりで毒を流すこともある。福の神が厄介なフグだったりする世の中である。失礼ながら、よそからそんな視線も浴びていることに、まだ気付いてもらえないとみえる。