2011年2月12日1時19分
エジプト大統領府(右奥)前に押し寄せた人々=カイロ、古谷祐伸撮影
カイロのタハリール広場で10日、ムバラク大統領の演説内容に怒りを示す市民たち=越田省吾撮影
大学生オマル・マグディさん(25)は10日に初めて広場にやってきた。「ムバラクは独裁者で今まで怖かった。辞めると聞いたから、もう大丈夫だと思った。歴史的な夜に何が起きるかを現場で見たくて」
参加者は運動の勢いをそがないように、混乱を避ける工夫も始めている。
広場では多くのボランティアの男性が手をつなぎ、群衆を動かす誘導路を作っている。意見を訴えるための即席ステージがいくつもできた。広場中心部の外資系高級ホテル建設現場にあるトイレでは、エジプトでは珍しく順番待ちの列ができている。11日の大規模デモに備え、広場北側には新たに急ごしらえのトイレもできた。
音楽が鳴り響き、マイクを通したシュプレヒコールに交じって、パンやお菓子を売る屋台の声も飛ぶ。付近のカイロ市民からの差し入れを配る「配給所」もあり、チーズにパン、ジュースにツナ缶などをひとまとめにしたものを無料で配る。運営者の一人、マハムーズ・オフマンさん(22)は「こういう時こそ団結が必要です」。
広場の一角の芝生部分の通称「テント村」も健在だ。市民が持ち込んだビニールシートを、木などにくくりつけた簡易なものだが、連日泊まり込みを続ける男性は「家に帰っても電気や水が来ない時も多い。どうせ同じだ」と笑顔だった。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。