2011年2月12日1時19分
エジプト大統領府(右奥)前に押し寄せた人々=カイロ、古谷祐伸撮影
カイロのタハリール広場で10日、ムバラク大統領の演説内容に怒りを示す市民たち=越田省吾撮影
【カイロ=古谷祐伸、前川浩之】「我々が政権を倒した」。エジプトの反政府デモの拠点、タハリール広場では、大統領辞任の報が伝わると集まっていた人たちが一斉に喜びの声を上げた。金曜礼拝にあわせた3回目の金曜デモ「勝利の金曜日」で、この日は約15キロ離れた大統領府前にもデモが広がっていた。
「逃げようとしてもそうはいかない。捕まえて資産を没収しないといけない」。無職のアブドル・アジズさん(26)は広場でそう叫んだ。AP通信によると、野党勢力の指導者として期待されているエルバラダイ国際原子力機関(IAEA)前事務局長は「人生で最良の日だ」と述べた。
大統領府前には数万人が集まっていた。医師タレク・ワヒドさん(26)は、広場を飛び出して仲間と一緒にやってきた。ワヒドさんらを動かしたのは、権力の座に居座り続けようとする大統領への憤りだ。
「こうなったら、国営テレビを制圧し、大統領府にも押し入るしかない」。10日夜、広場の民衆デモの「組織委員会」で責任者を務めるアフマド・ナギーブさん(34)は大統領の演説を聴き、そうぶちまけた。
最大野党勢力ムスリム同胞団所属という元国会議員モフセン・ラーディさん(43)は「(演説を受け)民衆のパワーは高まり、『革命』に有利な状況にある」と話す。
野球場二つ分ほどの大きさのタハリール広場は、すでに市民の怒りを押し込めておくには狭くなっていた。
30年間続いた強権支配の崩壊という歴史的な瞬間を体験しようと、若者から家族連れまでさまざまな人たちが集まり、身動きが取れないほどだ。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。