髪を切った
ばっさり顎まで
夕べは泣いてなかなか寝付けなかった
化粧水とか
洗顔とか
濡れた顔を手で覆うとダメみたいで
化粧水つけるたび涙
洗顔するたびに涙
髪を切ったのは失意からじゃなくて
もともと切りたかったから
彼にも短くしてパーマかけたいって話していた
ちょっとめげていたけど
お昼くらいになったら少しずつ落ち着いてきた
揺るがない気持ちを信じるしかないのだけど
それがあるからがんばろうって思える
だって
彼といっしょにいたいから
手を離すかどうかなんて今は決断できることじゃない
別れるなんて今は受け入れられることじゃない
顎の辺りでゆれる髪を感じながら
夜道をてくてく歩いて帰った
途中の公園にある大きなソメイヨシノを見上げる
まだほとんどつぼみで三分咲きくらい
それを見て安心する
次の休みは金曜日
逢えないなら来週の水曜日
もしかしたら桜を見られるかもしれない
くるりと振り返ったら大きなお月様がわたしを照らしていた
もう月がまあるくなる時期だったんだ
大丈夫だよって月が笑う
そう月が笑っているなら大丈夫
こうして大丈夫ってわたしを照らしていてね
彼のことも照らしていてね
時間が掛かってもいい
桜が散ってしまってもいい
彼とまた
次の桜を見られればいいから
髪を切ったわたしを
早く彼に見せたいと思った
どう映るかな?
どうか
強い心で待っていられますように
これから彼に逢いに行こうか迷っている
昨日の夕方
彼から「さようなら」のメールが届いた
たいていわたしが何の行動もしなければそうなるのはいつものことで
何の動揺もなくケイタイを閉じた
駆けつけていたならよかったのかな
頭が回らなくて拒否された言葉に動く気が起きなかった
昨日は妹を無理やり連れ出して
彼と歩く予定だった川べりを歩いた
咲いてる桜を見つけながら歩くほどつぼみが多くて
どの花も寒さで実を固くしているようだった
「なんで喧嘩してるの?」
そう妹に尋ねられたけど
「喧嘩はしてないよ」
としか答えられなくて自分もすっきりしない
今日彼と一緒にお花見できないのは
こんなに寒いからお花見は後日にした方が良いよってことなんだ
そう言い聞かせながら歩く
でも夕方にはさよならのメール
いつもの流れだ
どうやって今まで仲直り出来ていたのかも思い出せない
夕方はDVDを見ていた
妹が借りてきた「ロミオとジュリエット」
たまには古典もいいよねって二人で鑑賞
はっとしたセリフがあった
あの有名なバルコニーのシーンで
ロミオがジュリエットに「あの月に誓って」と言ったら
「毎晩カタチを変える月になど誓わないで」
そうジュリエットが首を振る
そっか
月に誓い合ったわたしたちだから
こんなにコロコロと変わってしまうのかな
落ち着かなくていつも満ちたり欠けたりを繰り返してしまうのかな
そんなことを思った
見ながら睡魔に襲われて
肝心なロミオの自害を朦朧としながら見て
あとは完全に夢の中
ロミオとジュリエットみたいに情熱だけで
恋に落ちた翌日に結婚式なんて
そんな若気の至りさえ羨ましい
コタツで寝てしまうことなんて滅多にないのに
そのせいか
目が覚めたら偏頭痛と吐き気で起き上がれなくなってしまった
夕べはメイクも落とせないくらい弱っていて
どうにかベッドに横になり深く眠った
目覚めたら12時を回っていて驚いた
昨日より良いお天気
洗濯物を干す
そして彼に逢いに行こうか迷う
偏頭痛は治まったけど気持ち悪いことは気持ち悪い
何よりシャワーを浴びないと出られないけど
湯上りに外に出る元気はない
こうやって言い訳している場合じゃないのに
身体が弱っているからか
弱音しか出てこない
それでも
彼が好き
もういい加減理解して本気で身を引こうか
それでも彼を信じて駆け寄り続けようか
正解なんてないけど
考えている
ただ、分かっているのは
愛することは考えることではなくて
心で感じること
心が求めるものに素直に生きなければ
わたしは一生後悔するだろうから
でも
桜に季節にさよならなんて
さすがにちょっと動けない
逢いたいけど
逢えないかも知れない
でも動かなきゃ逢える可能性すらない
迷っている
迷っている
ずっともっとたくさんのことを迷っている